2022 Fiscal Year Research-status Report
熱中症予防の為のヒト熱放散反応におけるTRPA1チャネルとNOSの役割解明
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21K17601
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
片岡 由布子 早稲田大学, 人間科学学術院, その他(招聘研究員) (10896244)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | TRPA1 channel / forearm blood flow / sweat rate |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヒトにおいて、TRPA1チャネル活性が皮膚血管拡張反応を引き起こす場合、これには一酸化窒素(NO)合成酵素であるNOSが関与しているかを明らかにすることを目的とする。 ヒトにおいて、TRPチャネルの一つ、TRPA1チャネルを活性するシナモンの匂い成分のシンナムアルデヒドを皮内透析法によりヒトの皮下に局所投与した。そしてTRPA1チャネル活性化による、皮膚での血管拡張にNOSは寄与する一方、COX、KCaチャネルはほとんど寄与しないという結果を得た。TRPA1チャネルの血管拡張メカニズムについての研究は主にマウスを用いた研究が多く実施されている。そのため、本研究において、局所投与ではあるが、ヒトを対象として、in vivoでTRPA1チャネル活性化による、皮膚での血管拡張にNOSが寄与する、という結果が得られたことは貴重であると考える。また、実験中の皮膚温度に関して、本研究では実験を通して33度に皮膚を局所加温している。TRPA1は高い温度で不活性化するという報告もあるが、本実験では不活性化せず、TRPA1活性剤の刺激に反応して血管拡張した。本研究では他の温度、例えば25℃や40℃などに温度設定した場合の、TRPA1活性剤に対する血管反応を見ていないので比較はできないが、少なくとも33℃という温度はTRPA1の働きを阻害しなかった。また、マウスを用いた研究での、TRPA1チャネル活性による皮膚血管拡張にNOSが関与した(Aubdool et al., 2016)、という結果と照らし合わせ、本研究のヒトでのTRPA1チャネル活性による血管拡張は、感覚神経上のTRPA1チャネルが活性化することによって引き起こされている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
TRPA1活性剤であるシンナムアルデヒドを使い、ヒトを対象として、まず常温環境下でのTRPA1活性に伴う血管拡張にNOSが関与することを明らかにした。この皮膚血管拡張は感覚神経上のTRPA1が関与している可能性が考えられ、常温環境下でのTRPA1による血管拡張の可能性についても広く検討するため、実験準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
暑熱環境初め、常温環境下での血管拡張にもTRPA1が関わっている可能性も踏まえ、実験条件を増やして、研究を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
研究室で残っていた消耗品を使用したため、学会出張などの経費使用分に出費が出るにとどまった。 実験条件の追加に伴い、新たに消耗品を購入し、実験を遂行する予定である。
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