2023 Fiscal Year Annual Research Report
Does lactate increase by a single high-intensity exercise contribute to the enhancement of working memory?
Project/Area Number |
21K17605
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
朴 ジョンヒョク 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 研究員 (80835843)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 乳酸 / NADH / 海馬 / 作業記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに疲労困憊に至るまでの一過性高強度走運動が血中乳酸濃度の増加をもたらし、海馬の乳酸濃度およびミトコンドリア生合成を促すことを見出してきた。この効果は30分間の一過性の低強度(トレッドミル速度10m/分)と中強度(20 m/分)走運動では認められなかったことから、血中および海馬乳酸濃度の上昇を示す強度の運動が、短期記憶(作業記憶)を向上させる可能性が考えられる。近年、神経細胞への乳酸添加が細胞内のNADH/NAD+比を高め、その顆粒のERK1/2を含むシグナル伝達経路を活性化して神経可塑性関連の初期応答遺伝子(Arc、c-Fos、Zif268)の発現を高めることが報告されている。そこで、まず非運動群マウスの血中乳酸濃度2~2.4 mMに対しマウスへの疲労困憊の一過性高強度運動の直後には血中乳酸濃度を12~14 mMを示した。次に高強度運動30分後にY字型迷路試験による作業記憶を評価したところ、非運動群と比較して作業記憶の向上を示した。また、そのマウスの海馬において神経可塑性関連の初期応答遺伝子および脳由来神経栄養因子(BDNF)mRNA発現量の有意な増加が認められた。引き続き、今年度は血中乳酸の上昇により海馬へ取り込まれる際にNAD+がNADHに変換されNADH/NAD+比を高めることで、IGEs発現量の増加をもたらすかについて検討した。その結果、腹腔内への乳酸投与は海馬のNADH/NAD+比を増加させる傾向を示した。これらを踏まえ、高強度運動時の骨格筋より血中に放出された乳酸が海馬内に取り込まれ、海馬NADH増加を引き起こし、初期応答遺伝子の発現量を高める。その結果として作業記憶向上をもたらす可能性が示唆された。
|