2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of the Integrity Index for College Sports Organizations and Its Relationship with Athletic and Academic Performance
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21K17607
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Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
庄司 直人 朝日大学, 保健医療学部, 准教授 (40783353)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | インテグリティ / インテグリティ指標 / インテグリティ評価方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、インテグリティの評価手法の開発を進めた。スコーピングレビューにより、スポーツ関連組織のインテグリティと関連する11のキーワードと52の重要概念を特定した。52のスポーツ組織のインテグリティに関連する重要概念をもとに、インテグリティにつながる価値(具体的な考え方や具体的なアクション)を先行研究から探索した。そして、スポーツチームのインテグリティを、個人のインテグリティの総体、組織のインテグリティ、指導者のインテグリティの3側面から評価するための項目を合議制質的研究法により示した。そして、そこで示された評価項目を用いて120名のアスリート学生を対象とした2度の量的調査を行い、64(個人のインテグリティ 29項目、組織のインテグリティ 26項目、指導者のインテグリティ 9項目)の評価項目に絞り込んだ。スポーツチームのインテグリティを評価する項目の検討に加え、その評価方法の検討も同時に行われた。インテグリティの定義は「内的価値と言行が統合または一致した状態」であり、インテグリティを評価するためには、どのような内的価値を選手・指導者(スタッフ)、チームが大切にしており、その内的価値が実際に体現されているかどうかの2点を問う必要がある。そして、インテグリティにつながる価値を大切にし、かつ実際の言行との一致が確認される場合、インテグリティにポジティブに作用すると仮定し、いくつインテグリティにつながる価値と言行が一致しているかを加算し指標化した。各評価項目を用いてすでにインテグリティにつながる内的価値の保有と、言行の一致をもとに、インテグリティ・ポテンシャル、インテグリティ・パフォーマンス、インテグリティ・クイック・インプルーブメント、インテグリティ・レスの4つの指標を示し、それらを用いてインテグリティの状態についてフィードバックすることの有用性を質的調査により確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スポーツチームのインテグリティを評価するための手法は概ね確立できたと考えられる。研究成果を複数の学会で定期的に発表し議論することで、インテグリティの評価方法に関してこれまで蓄積してきた知見が成熟しつつある。インテグリティをいかに評価するかについては、インテグリティをいかに定義するかに依存するが、国際的なインテグリティの定義を参考にしながら、本研究におけるインテグリティを明確にし、その定義とその定義の合理性を論文を通じて発表することができた。これまでの研究の成果からインテグリティの評価は、内的価値と言行の一致を評価する方法が適切であると考えられ、それに応じた評価手法を学会発表、発表抄録を通じ示すことができた。評価手法については、一区切りと言える状況にあるが、指導者のインテグリティ、チーム運営スタッフ目線でのインテグリティ評価項目は追加で検討することが必要である。さらに競技成績と学業成績との関連についても、インテグリティの評価手法が確立されたことで検証が可能な状況になった。2024年度以降はインテグリティと本研究のメインアウトカムである競技成績および学業成績、副次アウトカムであるキャリア成熟との関連を検証する。同時にインテグリティを涵養するための具体的な手法についてのトライアルを開始する。全体の進捗状況としてはやや遅れているが、その理由はインテグリティを評価する手法を検討するにあたり、インテグリティの定義の明確化、関連概念の整理を丁寧に進めることが必要となったことにある。インテグリティの概念的明確性が向上したことで、評価手法がより合理的になった。そのため、本研究課題の目的であるインテグリティと競技成績・学業成績の関連の検証、インテグリティ涵養方法の開発はより円滑に進むものと予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後本研究課題は、大学スポーツチームにおけるインテグリティと本研究のメインアウトカムである競技成績および学業成績、副次アウトカムであるキャリア成熟との関連を検証する段階へ移行する。その前の準備段階として、スポーツ・インテグリティ・インデックス(指標)大学版のうち、指導者および運営スタッフ目線でインテグリティの保持・強化に必要と考えられる評価項目の洗練化を図る。これについては、大学スポーツチームの運営における、方針の設定、透明性の担保、説明責任、会計の透明性、不祥事の取り扱いとその対策などの視点をインデックスに取り込み完成させる。インテグリティと競技成績・学業成績・キャリア成熟との関連を検証するにあたり、最も大きな課題は調査先の確保であり、今年度の第一四半期で調査先を確定できるよう調整中である。第二四半期より調査の実施、データ分析に移行する予定である。最後にインテグリティの涵養方法を検討する予定である。具体的にどのような手法でインテグリティを涵養するかについては、評価手法の検討と並行しトライアルを実施した。その際の知見をもとに検討を重ね、実効性の高い手法の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が発生した理由は主に次の2点である。一つは、海外ジャーナルの論文掲載料(APC)の高騰に対応するためできるだけ支出を減らす方針で研究を進めたことにある。本年度の論文掲載は大きな掲載料負担がなかった。2024年度以降の論文掲載を想定しAPC捻出のため経費を節減する方針は継続する予定である。二つ目は、調査の打ち合わせのための旅費を計上したが、経費節減するためできるだけリモート打ち合わせができるようにした。また、学会等の日程内で打ち合わせが可能な場合は、そこで打ち合わせを行うようにし、できる限り経費を節減しAPCの原資としたいと考えた。次年度に繰り越した予算は、上記の通りAPCの原資とする予定である。
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