2023 Fiscal Year Annual Research Report
運動競技選手におけるメンタルヘルス疫学調査とスクリーニング法に関する研究
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21K17615
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
小塩 靖崇 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 地域精神保健・法制度研究部, 研究員 (10807085)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アスリート / メンタルヘルス / 疫学 / スポーツ / スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
アスリートを対象に行った調査データの分析と成果発表を行った。国際標準のアスリート向けスクリーニングツールの日本語版(SMHAT-1; APSQ; SPSI)を使用した。各ツールの日本語版は原著者の許可を得て公開した。SMHAT-1の有用性を評価するため、トリアージのStep1(APSQによる心理的ストレス)と、6つのツールを用いるStep2(不安、うつ、睡眠、アルコールなど)を回答してもらい、Step1の偽陰性率(FNR)を調査した。結果として、Step1でカットオフ値を超えた選手は65%であった。Step2でカットオフ以上の選手は、GAD-7(不安症)で2.7%、PHQ-9(うつ病)で5.9%、PHQ-9のItem9(希死念慮)で7.7%であった。不安・うつ・希死念慮の偽陰性率は0%であったが、その他の症状・障害のFNRは高く、特にアルコールのAUDIT-Cは64.9%、摂食障害のBEDA-Qは35.1%と高い結果となった。これらの結果から、不安・抑うつ・希死念慮はAPSQ(Step1)である程度判断可能であるが、その他の症状(睡眠、アルコール、薬物、摂食障害)は十分に判断できないことが示された。この知見の他、健康教育や健康行動、また個人の価値観との関連を分析して知見を得ている。学術団体の学会・イベントでの発表、各競技選手会やチーム、協会などで、一般集団では学校や企業、自治体にて講演会を実施、メンタルヘルス教育・研修として活用した。今後の課題は、長期的なフォローアップ調査を行い、アスリートのメンタルヘルスと健康行動の変化をモニタリングすることが重要である。さらに、アスリートのメンタルヘルスを支援するための教育・研修プログラムの効果を検証し、より効果的な支援方法を確立することが求められる。
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