2021 Fiscal Year Research-status Report
慢性ストレスおよび抑うつ状態は運動時ヒト海馬活動のバラツキを生むか?
Project/Area Number |
21K17619
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山崎 雄大 筑波大学, 体育系, 特別研究員(PD) (70896430)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 有酸素性運動 / 海馬 / 慢性ストレス / 磁気共鳴イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性的なストレスの蓄積は、我が国で増加している精神疾患や気分障害の要因の一つである。記憶中枢でありストレス制御にも関与する海馬は、慢性ストレスにより容易に衰退する。海馬機能を高め抗ストレス力を高める手段として運動の有効性が指摘されているが、その全容は明らかでない。特に、動物研究にて確認されている運動中の海馬活性がヒトでも生じるかどうかは不明である。さらに、慢性ストレスの蓄積による海馬の機能的・構造的な変化が運動中の海馬活性に影響を与えるかについてもわかっていない。本研究では、ヒト海馬において運動中に海馬活性が見られるか明らかにするとともに、慢性ストレスが運動中の海馬活性に影響するか明らかにすることで、海馬機能や抗ストレス力を高める運動処方への応用を目指す。 当該年度は、本研究室で明らかにしている一過性超低強度運動が海馬記憶能に及ぼす影響について再現実験を行い、実験プロトコルが海馬機能改善をもたらす妥当な実験条件であることを確認した。また、本研究で運動中の海馬活性を変調させると想定している慢性的なストレスや精神疲労、心理状態自体が、若年者における海馬記憶能に影響を与えるのかについて検討した。その結果、記憶課題成績自体は若年者における心理状態や慢性ストレスの影響を検出できなかった。そのため、健常若年者レベルでは心理状態の悪化や慢性ストレスの蓄積は海馬機能の低下に現れないことが示唆され、運動中の海馬活性や運動前後の海馬機能に着目する必要性を示した。また、慢性ストレスを客観的に検討するため、毛髪中に蓄積されるコルチゾールの測定についても着手しており、今後は海馬の構造的・機能的変化や運動効果との関係性について検討予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は運動中の海馬活性や運動前後の海馬活性変化と慢性ストレス、心理状態との関係性を検討する。当該年度は、慢性ストレスや心理状態と海馬機能に関する基礎的な関係性に着目し検討を進めた。また、慢性ストレスの客観的評価法として毛髪中コルチゾール濃度の測定についても着手している。以上から、運動中の測定は実施していないものの、慢性ストレスを評価する上で妥当性のある項目について吟味することができ、次年度以降の研究に用いる測定指標の選定を進めることができた。また、海馬機能を向上させる一過性超低強度運動の効果についてもその再現性・妥当性を確認し、次年度以降の実験で用いる上で有用なプロトコルであることを示すことができた。以上のことから、当該年度は、運動中の海馬活性や前後の海馬活性変化、そして慢性ストレス、心理状態が及ぼす影響を検討する上で必要となる基礎的なデータを収集することができたため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に検討した運動プロトコルを用いて、運動中および運動前後の海馬活性について検討する。そのために必要なfMRIの測定条件や解析方法の検討を進める予定である。 また、上述した運動中および運動前後の海馬活性が慢性ストレスや心理状態の影響を受けるかどうかについても、当該年度に選定した評価指標を用いて検討を進める予定である。
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Research Products
(6 results)