2023 Fiscal Year Research-status Report
慢性ストレスおよび抑うつ状態は運動時ヒト海馬活動のバラツキを生むか?
Project/Area Number |
21K17619
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山崎 雄大 筑波大学, 体育系, 特別研究員(PD) (70896430)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 有酸素性運動 / 海馬 / 慢性ストレス / 磁気共鳴イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性的なストレスの蓄積は、我が国で増加している精神疾患や気分障害の要因の一つである。記憶中枢でありストレス制御にも関与する海馬は、慢性ストレスにより容易に衰退する。海馬機能を高め抗ストレス力を高める手段として運動の有効性が指摘されているが、その全容は明らかではない。特に、動物研究にて確認されている運動中の海馬活性がヒトでも生じるかどうかは不明である。さらに、慢性ストレスの蓄積による海馬の機能的・構造的な変化が運動中の海馬活性に影響を与えるかどうかについてもわかっていない。本研究では、ヒト海馬において運動中に海馬活性が見られるか明らかにするとともに、慢性ストレスが運動中の海馬活性に影響するか明らかにすることで、海馬機能や抗ストレス力を高める運動処方への応用を目指す。 当該年度は、海馬の活動の測定に向け運動時MRI に着手したほか、脳幹覚醒中枢であり海馬にも密に投射する青斑核の活性を反映する瞳孔径の運動中測定も実施した。また、慢性ストレスによる脳の機能低下や脆弱性を評価する手法として低酸素に着目し、運動中の瞳孔活動あるいは海馬依存記憶能の変化について検討を進めた。一連の研究の中で、軽度低酸素吸引による海馬依存記憶能の変化は対象者の抑うつレベルや慢性ストレスレベルと関連していることを示し、低酸素により慢性ストレスや抑うつによる海馬の脆弱性を評価できる可能性を示唆する結果を得た。一方で、軽度低酸素下での中強度運動実施は、質問紙から測定される慢性ストレスレベルの程度に関わらず海馬依存記憶能を向上させた。運動による海馬依存記憶能改善効果には、運動中の瞳孔拡張が一部関係することを掴んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
運動中の瞳孔応答や運動による海馬記憶能変化と抑うつレベルの関係を検証し、一定の成果を得た。また、運動中MRI測定についてその実現に向けた解析を進めることができた。慢性ストレスや抑うつが及ぼす海馬の機能や脆弱性への影響は、健常若年者ではなかなか掴むことができなかったが、軽度低酸素を付加することで、慢性ストレスや抑うつによる海馬脆弱性を健常若年者でも検証できる可能性を見出した。以上より、当該年度は、運動時の海馬活性および海馬機能変化に対する慢性ストレスや抑うつの影響を包括的に理解するための知見を得ることができた。だが、成果を論文としてまとめるところまでは至らず、研究期間の延長を必要とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本来は令和5年度が研究の最終年度であったが、これを延長し、これまでに測定できた運動中のパラメーター、あるいは運動による海馬機能変化と、慢性ストレスレベルや抑うつレベルとの関係についての解析をさらに進める。また、これまでの成果を論文としてまとめて投稿予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度終了時までに成果を論文化する予定であったが、研究の進捗により投稿まで至らなかったため、投稿・出版に係る費用を繰り越す必要が生じた。現在、成果について投稿準備中であり、投稿の際の英文校正費、および掲載料として繰越金を使用予定である。
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