2021 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌叢由来代謝物質による寿命延伸効果の検証とメカニズム解明
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21K17643
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石井 千晴 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 研究員 (40866779)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腸内細菌叢 / 代謝物質 / 寿命 / メタボローム |
Outline of Annual Research Achievements |
腸内には多種多様な細菌叢が生息しており、腸内細菌叢の構成や細菌叢が産生する代謝物質は、病気の発症や健康維持に関与している。腸内細菌叢の構成や腸内・血中の代謝物質は加齢によって変化しており、加齢によって腸内で変化する代謝物質の一部が線虫の寿命に影響を与えることが本研究で明らかになった。このことからこの代謝物質は、寿命の延伸を促進する腸内細菌叢由来代謝物質の有力な候補であると考えられる。しかし、マウスやヒトなどの哺乳類でこの物質が老化や寿命に与える影響や、この物質が寿命に影響を与えるメカニズムは未解明である。そこで本研究では、本物質が哺乳類の寿命に与える影響の検証を目的とした。2021年度は、本物質が線虫以外の生物種の寿命に与える影響を検証するため、マウス、ヒト正常二倍体繊維芽細胞、ショウジョウバエの3種の生物種について投与実験を行った。その結果、ヒト正常二倍体繊維芽細胞の最大分裂回数と、ショウジョウバエの寿命については、本物質による寿命延伸効果は認められなかった。マウスについては寿命が2年程度と長いため、現在も実験進行中である。次に、線虫における本物質の寿命延伸メカニズムの解明に取り組んだ。野生型及び本物質が蓄積すると予想される遺伝子を欠損させた線虫の寿命を比較したところ、欠損株で野生株よりも寿命が延伸することが明らかとなった。この線虫に対してメタボローム解析を行ったところ、欠損株では本物質が野生株よりも高濃度に存在することが明らかとなった。今後は、これらの線虫のRNA-seq解析を行い、寿命延伸のメカニズムに関わる遺伝子を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は研究計画のスケジュール通り、マウスとヒト細胞に対する寿命延伸効果の検証に取り組んだ。また、それに加えてショウジョウバエに対する寿命延伸効果の検証も実施した。線虫に対しては、メタボローム解析とトランスクリプトーム解析を行う予定であったが、2023年度に行う予定であった欠損株に対する寿命延伸効果の検証を前倒しですすめ、トランスクリプトーム解析は2022年度に行うこととした。そのため、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度については、引き続きマウスに対する本物質の投与による寿命延伸効果の検証を継続する。また、並行して野生株と欠損株の線虫に対するトランスクリプトーム解析を行い、寿命延伸のメカニズムに関わる遺伝子を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画の順序を入れ替え、費用が高額なトランスクリプトーム解析を次年度に行うことになった。2022年度に当初は2021年度に行う予定であった、トランスクリプトーム解析とデータ解析用のPCの購入を行う予定である。
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