2021 Fiscal Year Research-status Report
歯周病原細菌が身体機能の加齢性変化に与える影響の検討
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21K17644
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
田端 宏樹 順天堂大学, 大学院医学研究科, 博士研究員 (50876886)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 歯周病原細菌 / 加齢性疾患 / 骨格筋機能 / 認知機能 / 血管機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周病は歯周病原細菌の感染により引き起こされる慢性炎症性疾患であり(Darveau, 2010)、65歳以上の高齢者では約6割が歯周病有病者である(歯周疾患実態調査, 2016)。歯周病は歯牙の喪失に関わるだけでなく、認知症(Iwasaki et al., 2016)や心血管疾患(Hokamura & Umemura, 2010)、肥満や糖尿病(Papageorgiou et al., 2015)などの加齢性全身疾患と関連する。 これまで、歯周病と全身疾患との関係はTNF-αなどの炎症性物質やIL-6やIL-8などの炎症性サイトカイン、酸化ストレスなどを介した間接的な関連であると説明されてきた(Page, 1998; 日本歯周病学会, 2016)。しかし、近年の研究において、歯周病を引き起こす歯周病原細菌が動脈硬化(Wada & Kamisaki, 2010)や骨格筋の減少(Kawamura et al, 2019)、認知症の成因であるアミロイドβの産生(Nie et al, 2019)などに直接影響する可能性が示されている。しかしながら、これらの先行研究はマウスを対象としており、歯周病原細菌がヒト高齢者の筋力や筋代謝、動脈硬化度、認知指標や脳容積などに与える影響は十分に検討されていない。そこで、本研究では地域在住高齢者コホートを活用して歯周病原細菌と骨格筋機能、血管機能、認知機能の加齢性変化との関連を明らかにする。 令和3年度は文京区在住の高齢者を対象とした観察型コホート研究“Bunkyo Health Study”の5年後追跡調査に参加した368名(男性149名、女性219名)の唾液を採取した。また、併せて口腔内写真の撮影、咬合力の測定も実施した。令和4年度もデータの採取を継続して実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は地域在住高齢者コホート“文京ヘルススタディ―”のフィールドを活用して、新たに唾液を採油し、唾液中の歯周病原細菌および生化学指標と高齢期の骨格筋機能、認知機能、循環器機能との関連を明らかにすることである。 令和3年度は文京ヘルススタディーの5年後測定に参加した368名の唾液採取を実施した。当初の計画では令和3~4年度で文京ヘルススタディ―の5年後測定参加者800名の唾液を採取する予定となっており、その約半数で唾液採取を実施できたため、概ね計画通りに順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度も昨年度までと同様に文京区在住の高齢者を対象としたコホート研究“文京ヘルススタディ―”と連携して唾液の採取を実施する。2022年度は2017年度にベースライン測定に参加した約400名を対象に5年後の追跡測定を実施する。また、2022年度は唾液の採取と並行して歯周病原細菌の測定も行い、歯周病原細菌の保有数と骨格筋機能、認知機能、循環器機能との関連を、多変量解析を用いて検討し、ヒト高齢者においても歯周病原細菌が骨格筋機能、血管機能、認知機能に影響するかを明らかにする。ここまでの研究成果は令和5年6月に開催される第41回日本臨床歯周病学会に演題登録を行う。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大の影響により国際学会等が中止や延期となり、学会参加費および渡航費支出が生じなかったため次年度使用額が生じた。生じた次年度使用額は研究成果発表や今後の国際学会への学会参加費および渡航費として使用予定である。
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Research Products
(5 results)