2022 Fiscal Year Research-status Report
歯周病原細菌が身体機能の加齢性変化に与える影響の検討
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21K17644
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
田端 宏樹 順天堂大学, 大学院医学研究科, 博士研究員 (50876886)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 歯周病原細菌 / 加齢性疾患 / ラクナ梗塞 / 血中抗体価 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、歯周病と全身疾患との関連の機序として歯周病病原細菌による全身の組織への直接的な影響が示されている。実際、歯周病の主な病原菌であるPorphyromonas gingivalis (P.g)は口腔から嚥下を介して取り入れられることで、循環器疾患(Zhang et al, 2021)、動脈硬化(Wada & Kamisaki, 2010)の発症や認知症の成因であるアミロイドβの産生(Nie et al, 2019)など加齢性全身疾患の発症と関連することが報告されている。しかし、これらの研究の多くはマウスレベルでの研究が多く、ヒト高齢者においては十分な検討は行われていない。そこで、ヒト高齢者コホートデータを用いて全身のP.g感染を反映する血清P.g抗体濃度と心血管疾患の1つであるラクナ梗塞との関連について検討した。 2015~2018年に都市部在住高齢者を対象としたコホート研究”Bunkyo Health Study“に参加した65~84歳の高齢男女1619名のベースラインデータを用いて検討を行った。絶凍保存血清を用いて血清P.g抗体濃度を測定し、頭部MRIのデータよりラクナ梗塞の有無および個数を判別した。ノンパラメトリック法に基づき、血清P.g抗体濃度の上位5%を異常高値と定義し、異常高値以下の基準値群と異常高値群とでラクナ梗塞の有無のオッズ比と95%信頼区間およびラクナ梗塞の個数を、潜在的交絡因子を調整した上で比較検討した。 異常高値群では基準値群に比べてラクナ梗塞のオッズ比は有意に高かった(オッズ比2.17, 95%信頼区間1.28-3.66)。また、異常高値群では基準値群に比べてラクナ梗塞の個数も有意に多かった(異常高値群:1.27±0.20個、基準値群:0.63±0.04個)。 よって、全身性のP.g感染はラクナ梗塞と関連する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は地域在住高齢者コホート“文京ヘルススタディー”のフィールドを活用して、新たに唾液を採取し、唾液中の歯周病原細菌および生化学指標と高齢期の骨格筋機能、認知機能、循環器機能との関連を明らかにすることである。 令和4年度は文京ヘルススタディーの5年後測定に参加した368名を対象に唾液採取を実施し、令和3年度の367名と合わせてこれまでに735名の高齢者の唾液を採取した。また、令和4年度は本研究の主たる標的としている歯周病原細菌のPorphyromonas gingivalisの口腔および全身性の感染状況を反映する血中抗体価を用いて横断的な解析を実施し、脳血管疾患との関連について検討を実施した。そのため、おおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度も昨年度までと同様に文京区在住の高齢者を対象としたコホート研究“文京ヘルススタディー”と連携して唾液の採取を実施する。令和5年度は平成30年度にベースライン測定に参加した約230名を対象に5年後の追跡測定を実施する。また、唾液の採取と並行して令和4年度に測定したベースライン測定時の血中P.g抗体価およびベースラインデータを用いて、ヒト高齢者における歯周病原細菌と骨格筋機能、認知機能、循環器機能との関連を引き続き多変量解析を用いて検討するとともに、これまでの研究成果に関して論文投稿を行う。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大の影響により国際学会等が中止や延期となり、学会参加費および渡航費支出が生じなかったため次年度使用額が生じた。生じた次年度使用額は研究成果発表や今後の国際学会への学会参加費および渡航費として使用予定である。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Glymphatic system impairment in nonathlete older male adults who played contact sports in their youth associated with cognitive decline: A diffusion tensor image analysis along the perivascular space study2023
Author(s)
Morita, Y., K. Kamagata, C. Andica, K. Takabayashi, J. Kikuta, S. Fujita, T. Samoyeau, W. Uchida, Y. Saito, H. Tabata, H. Naito, Y. Someya, H. Kaga, Y. Tamura, M. Miyata, T. Akashi, A. Wada, T. Taoka, S. Naganawa, H. Watada, R. Kawamori, O. Abe and S. Aoki
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Journal Title
Frontiers in Neurology
Volume: 14
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] Relationship between masseter muscle volume, body composition and sarcopenia in the elderly living in the region of Japan2022
Author(s)
Abulaiti Abudurezake, Saori Kakei, Futaba Umemura, Shota Sakamoto, Hiroki Tabata, Hideyoshi Kaga, Yuki Someya, Huicong Shi, Hikaru Otsuka, Hitoshi Naito, Naoaki Ito, Tsubasa Tajima, Yasuyo Yoshizawa, Ryuzo Kawamori, Yoshifumi Tamura
Organizer
The 8th ASIAN CONFERENCE for FRAILTY AND SARCOPENIA
Int'l Joint Research
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[Presentation] アルコール摂取が及ぼすGlymphatic systemへの影響:DTI-ALPSを用いた検討2022
Author(s)
Yuichi Morita, Koji Kamagata, Kaito Takabayashi, Christina Andica, Shohei Fujita, Junko Kikuta, Thomas Samoyeau, Hiroki Tabata, Naito Hitoshi, Yuki Someya, Hideyoshi Kaga, Toshiaki Akashi, Akihiko Wada, Yoshifumi Tamura, Ryuzo Kawamori, Hirotaka Watada, Toshiaki Taoka, Shinji Naganawa, Osamu Abe, Shigeki Aoki
Organizer
第50回日本磁気共鳴医学会大会
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[Presentation] 高齢者の大脳白質に対する動脈硬化の影響2022
Author(s)
Junko Kikuta, Koji Kamagata, Masahiro Abe, Christina Andica, Yuya Saito, Kaito Takabayashi, Wataru Uchida, Hitoshi Naito, Hiroki Tabata, Akihiko Wada, Yoshifumi Tamura, Ryuzo Kawamori, Hirotaka Watada, Shigeki Aoki
Organizer
第50回日本磁気共鳴医学会大会
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