2022 Fiscal Year Research-status Report
食品因子の新たな骨破壊予防戦略:肥満に伴う破骨細胞分化とアポトーシス制御
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21K17646
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
田中 未央里 昭和大学, 医学部, 普通研究生 (00845505)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 破骨細胞 / 飽和脂肪酸 / 不飽和脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、肥満に伴い骨密度が低下すること、肥満者の骨髄で増加する飽和脂肪酸が破骨細胞の分化促進、アポトーシス抑制を介して骨吸収を亢進することが報告されている。一方で、その詳細な分子メカニズムや脂肪酸の種類による違い、食品因子が及ぼす影響には不明な点が多い。本研究では、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸が破骨細胞分化及びアポトーシスを制御するメカニズムについて、培養細胞ならびに動物モデルを用いて検討するとともに、食品因子による新たな骨疾患予防機構を解明することを目的としている。 二年目の本年度は、昨年度に引き続き、脂肪酸が破骨細胞に及ぼす影響と詳細な作用機序について、破骨前駆細胞RAW 264.7を用いて検討を行った。破骨細胞分化をパルミチン酸が亢進、オレイン酸、α-リノレン酸、リノール酸が抑制したことから、骨吸収シグナル経路 (p38 MAPK, JNK 1/2, NF-κB) の活性化に対する影響を検討した結果、RANKL刺激群と比較してパルミチン酸添加によりこれらのリン酸化が増加し、α-リノレン酸、リノール酸添加で減少した。パルミチン酸がNFATc1の転写活性を促進した昨年度の結果と併せて、パルミチン酸はTLR4/MAPK/NF-κB/NFATc1経路を介して破骨細胞分化を亢進する可能性が示された。また抗酸化酵素であるHO-1のmRNA発現量を測定した結果、オレイン酸、α-リノレン酸、リノール酸による発現増加が確認され、不飽和脂肪酸による破骨細胞分化抑制に酸化ストレス制御も関与する可能性が考えられた。 動物実験では、脂肪酸組成が異なる高脂肪食を8週間摂取したマウスにおいて、昨年度の解析の続きを行った。パルミチン酸高含有食群のみ血中遊離脂肪酸濃度が増加したことから、脂肪組織の慢性炎症を惹起している可能性を考え、遺伝子発現解析を行ったが、各群間で炎症関連遺伝子の発現量に差はみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度示した飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の破骨細胞分化亢進・抑制作用について、その詳細な作用機序を明らかにすることができた。破骨細胞のアポトーシスに対する影響については検討できなかったため、次年度の課題とする。動物実験についても、昨年度に引き続き解析を行い、生体内でもパルミチン酸が骨吸収を促進することを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
飽和脂肪酸ならびに不飽和脂肪酸が破骨細胞のアポトーシスに及ぼす影響について、培養細胞を用いて検討する。動物実験の残りの解析である骨髄脂肪組織の病理学的評価、血漿及び組織中の脂肪酸組成、血中骨吸収マーカー等の測定については、現在結果を解析中である。各種脂肪酸による破骨細胞活性化メカニズムを確認した後、同条件の細胞実験や動物実験を行い、脂肪酸の種類による破骨細胞分化亢進、アポトーシス抑制に対する食品因子の影響を検討する予定である。食品因子の候補として、これまでに破骨細胞分化や生体内での骨量減少に対する抑制作用、抗炎症作用の報告があるものを用いる。また阻害剤やsiRNAを用いて、それぞれの食品因子の詳細な作用機序を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度実施予定だった食品因子の影響を検討する細胞実験の一部を次年度に行う予定であり、主にそのための費用を次年度に繰り越すものである。また細胞株を共同研究者から寄付いただいたことなどから、当初予定していたよりも細胞、培地、試薬などの消耗品代が少なかった。翌年度分の請求額は予定通り、肥満に伴う骨吸収に対する食品因子の影響を検討する動物実験、学会発表、論文投稿等に使用する。
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