2023 Fiscal Year Research-status Report
食品因子の新たな骨破壊予防戦略:肥満に伴う破骨細胞分化とアポトーシス制御
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21K17646
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
田中 未央里 昭和大学, 医学部, 研究生 (00845505)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 破骨細胞 / 飽和脂肪酸 / 不飽和脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、肥満に伴い骨密度が低下すること、肥満者の骨髄で増加する飽和脂肪酸が破骨細胞の分化促進、アポトーシス抑制を介して骨吸収を亢進することが報告されている。一方で、その詳細な分子メカニズムや脂肪酸の種類による違い、食品因子が及ぼす影響には不明な点が多い。本研究では、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸が破骨細胞分化及びアポトーシスを制御するメカニズムについて、培養細胞ならびに動物モデルを用いて検討を行った。 三年目の本年度は昨年度に引き続き、破骨前駆細胞RAW 264.7を用いて、脂肪酸が破骨細胞に及ぼす影響と詳細な作用機序を検討した。パルミチン酸は骨吸収に関連する転写因子NF-κBの転写活性を促進した。またパルミチン酸によるTRAP活性化、破骨細胞分化関連因子のmRNA発現増加は、TLR4阻害剤TAK-242により抑制された。一方、パルミチン酸は抗酸化酵素であるHO-1、catalase、NQO1、GCLMのmRNA発現を抑制し、これに対するTLR4阻害の影響はみられなかった。したがってパルミチン酸による破骨細胞分化は、TLR4/MAPK/NF-κB/NFATc1経路、酸化ストレス亢進の両方を介している可能性が示された。さらにパルミチン酸と不飽和脂肪酸の同時刺激を行った結果、パルミチン酸による破骨細胞分化、抗酸化酵素減少に対するα-リノレン酸、リノール酸の拮抗作用が確認された。α-リノレン酸及びリノール酸が抗酸化酵素発現を亢進した昨年度までの結果と併せて、これらの不飽和脂肪酸は酸化ストレスを制御することで破骨細胞分化を抑制し、パルミチン酸による骨吸収亢進を阻害する可能性が示唆された。 動物実験では、脂肪酸組成が異なる高脂肪食を8週間摂取したマウスにおいて、昨年度の解析の続きを行った。パルミチン酸高含有食群のみ普通食群と比較して、血中骨吸収マーカーであるオステオカルシン濃度が増加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の破骨細胞分化亢進・抑制作用について、昨年度よりもさらに詳細な作用機序を明らかにすることができた。破骨細胞のアポトーシスに対する飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の影響、食品因子が及ぼす影響については検討できなかったため、次年度の課題とする。
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Strategy for Future Research Activity |
飽和脂肪酸ならびに不飽和脂肪酸が破骨細胞のアポトーシスに及ぼす影響について、培養細胞を用いて検討する。各種脂肪酸による破骨細胞活性化メカニズムを確認した後、同条件の細胞実験や動物実験を行い、脂肪酸の種類による破骨細胞分化亢進、アポトーシス抑制に対する食品因子の影響を検討する予定である。食品因子の候補として、これまでに破骨細胞分化や生体内での骨量減少に対する抑制作用、抗炎症作用の報告があるものを用いる。また阻害剤やsiRNAを用いて、それぞれの食品因子の詳細な作用機序を明らかにする。また動物実験の残りの解析として、骨髄脂肪組織の病理学的評価、血中骨吸収マーカー等の測定を行う。血漿及び組織中の脂肪酸組成については、現在結果を解析中である。
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Causes of Carryover |
脂肪酸が破骨細胞のアポトーシスに及ぼす影響、食品因子の影響を検討する細胞実験の一部と、動物実験の残りの解析を次年度に行う予定であり、主にそのための費用を次年度に繰り越すものである。また本研究成果をまとめて学会発表、論文投稿を行う予定である。
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