2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of mechanisms underlying tau-mediated neurodegeneration by WFS1 deficiency
Project/Area Number |
21K17655
|
Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
榊原 泰史 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 認知症先進医療開発センター, 研究技術員 (20734099)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | タウ病理 / 神経変性 / 青斑核 / ノルアドレナリン / 糖尿病 / マウスモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病の発症に関与するWFS1は、神経変性疾患であるウォルフラム症候群の原因遺伝子である。本研究では、WFS1の欠損により遺伝的に糖尿病を発症し、アルツハイマー病(AD)のタウ病理の過程を再現する新規マウスモデルを確立し、全身でのWFS1の欠損がタウ神経毒性により惹起される神経変性を増悪化する機序を調べる。 当該年度は、WFS1の欠損により遺伝的に糖尿病を発症する新規のタウ病理マウスモデルの確立のため実験を進めた。およそ2年というマウスの寿命内では、WFS1が発現する青斑核や嗅内野の神経細胞においてタウ病理が出現しないため、実験1として、WFS1欠損ヒトタウノックインマウスの青斑核や嗅内野に対し、マウスWFS1プロモーター下でヒト野生型タウを発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを投与し、タウ病理の創出を試みた。マウスWFS1プロモーターを搭載するベクターの構築が困難であったことから、既に構築していた青斑核神経細胞特異的にヒト野生型タウを発現するAAVベクターを、WFS1欠損ヒトタウノックインマウスの青斑核に投与する計画に切り替え実施した。 また、通常1年を超えて生存することがほぼないWFS1ノックアウトマウスについて、当研究センターの動物施設では24ヶ月齢に至るまで生存した。ここまで長期に飼育された事例はないので、実験2として、WFS1欠損により加齢性の脳病理にどのような影響が生じるかを検討した。糖代謝異常の影響によりタウ病理が出現している可能性がないか調べたところ、WFS1ノックアウトマウスで青斑核や海馬にリン酸化タウの蓄積は認められなかった。しかし24ヶ月齢では、若齢期で見られない、海馬特異的に沈着する凝集物が検出され、WFS1ノックアウトマウスではその沈着の程度が変化している可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、下記の通り、研究目的達成に向けて、準備、検討を進めている。 マウスWFS1プロモーター下でヒト野生型タウを発現するAAVベクターの構築を試みたが、マウスWFS1プロモーターのサイズが大きくベクターへの搭載が困難であったことから、嗅内野の神経細胞でも発現するSynapsin Iをプロモーターとして、ヒト野生型タウを発現するAAVベクターを代わりに構築した。次年度以降に、WFS1欠損ヒトタウノックインマウスの嗅内野に対しベクター投与を行う準備を進めている。また現在、既に調製していた青斑核神経細胞特異的にヒト野生型タウを発現するAAVベクターを、WFS1欠損ヒトタウノックインマウスの青斑核に投与し加齢飼育を行っている。次年度に、投与から6および12ヶ月が経過するので、脳組織を採取し、WFS1欠損によるタウ病理進展への影響について評価する。 WFS1ノックアウトマウスを用いた解析において、糖代謝異常によりタウ病理が出現している可能性について検討していた際、タウに対する抗体やマーカー抗体を用いた免疫組織染色を行ったところ、24ヶ月齢の個体では海馬特異的に凝集物の沈着が認められた。さらに、この凝集物沈着の程度がWFS1ノックアウトマウスでは変化している可能性が示唆された。これらの凝集物はタウからなるものではなかったので、何に由来するものであるか、神経細胞やグリア細胞に生じる凝集物なのかどうか、など今後詳しく解析を行うため、脳組織の採取を継続して行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
青斑核にヒト野生型タウ発現AAVベクターを投与し、加齢飼育を継続しているWFS1欠損ヒトタウノックインマウスについて次年度に脳組織を採取し、WFS1欠損下でタウ病理が増悪化し、青斑核から他の脳領域に拡大するかどうかについて調べる。 24ヶ月齢のWFS1ノックアウトマウスで変化する可能性のある、加齢に伴う凝集物の沈着について解析を進めるとともに、髄鞘形成不全や脳幹の神経細胞脱落など、ウォルフラム症候群で認められる脳病理が出現するかについても検討する。さらに、24ヶ月齢のWFS1ノックアウトマウスの膵臓組織についてβ細胞が脱落しているかどうかに加えて、小胞体ストレスなどβ細胞に対するストレス負荷状態について検討し、加えて血液サンプルを用いて血糖、血中インスリンの変化を測定する。
|
Causes of Carryover |
計画当初は、研究遂行のため研究補助員雇用に係る費用を計上していたが、今年度は雇用を行わなかったため、主に人件費分が残額となった。残額分については、次年度以降に研究補助員雇用のための人件費として使用し、組織学的・生化学的解析に使用する抗体類や関連試薬、その他の研究消耗品の購入に充当する予定である。
|