2022 Fiscal Year Research-status Report
大腸上皮ホメオスタシスに焦点を当てた閉経に起因する骨密度低下の機序解析
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21K17677
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
近藤 位旨 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 国立健康・栄養研究所 食品保健機能研究部, 研究員 (30832307)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エストロゲン / 炎症 / ムチン |
Outline of Annual Research Achievements |
実験計画を一部変更し、初年度のサンプルを用いて、偽手術および卵巣摘出術を施したマウスの大腸内ムチン量および大腸粘膜の遺伝子解析を行った。その結果、エストロゲン分泌の停止は大腸ムチン量、およびムチン分泌関連の遺伝子発現に影響をおよぼさないことが明らかとなった。つまり、大腸内のホメオスタシスはエストロゲンにより制御されていないと考えられる。 骨密度の低下は免疫系の変化から研究が盛んにおこなわれているものの、閉経との関連性は見出されていない。そこで、骨髄での遺伝子応答をRNA-seqにより網羅的に解析することで、免疫系以外の変化を検討した。その結果、生体内の酸化的損傷に関する遺伝子はエストロゲンの消失によりその遺伝子発現量が低下した。そこで、卵巣摘出術マウスにエストロゲン製剤を混餌で与え、エストロゲンの補填が酸化的損傷に関する遺伝子に与える影響をRT-PCRにより解析した。その結果、エストロゲンの供給によりグルタチオンペルオキシダーゼ関連遺伝子が増加傾向を示した。従来、骨密度の低下は炎症による破骨細胞の活性化から説明されている。一方、閉経(エストロゲンの消失)による骨密度低下では、明らかな炎症は検出されなかった。以上から、エストロゲンは生体内酸化の調節に関与しているために、その消失が抗炎症機構を減弱させている可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画を進め、申請時の仮説が証明されないことが明らかとなった。つまり、「閉経(女性ホルモンの欠乏)が大腸上皮のホメオスタシスの破綻を介して骨密度の低下を惹起するのか否か」の答えは、エストロゲンの消失は大腸上皮のホメオスタシスの破綻を引き起こさずに、骨密度の低下を惹起するである。 一方、骨髄遺伝子の網羅解析は骨髄でのフェロトーシス関連遺伝子の変化を示した。事実、卵巣摘出マウスへのエストロゲン供給はグルタチオンペルオキシダーゼ4の遺伝子発現量を増加させた。このことは、エストロゲンがフェロトーシスの制御に関与することを示している。最終年度は、細胞実験から閉経により(エストロゲン欠乏)生じる骨密度低下がフェロトーシスの制御を受けている可能性を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
2年間の研究から、申請時の仮説は証明されないことが明らかとなった。一方、本研究の主題である骨密度低下の機序解析は、フェロトーシスに焦点を当て、研究を進めることとする。 最終年度は破骨細胞を用いた細胞実験から、フェロトーシスが破骨細胞を制御するのか否かを検討する。つまり、エストロゲンがフェロトーシスを調整するグルタチオンペルオキシダーゼ4(GPX4)の作用に影響しているのか否かを検討する。具体的には、①GPX4阻害薬はフェロトーシスを誘導し、破骨細胞の寿命を短縮させるのか、②GPX4阻害薬は破骨細胞のどの成熟過程に作用し、破骨細胞の寿命を短縮させるのかを検討する。フェロトーシスにより破骨細胞の寿命が調節されているとすれば、成長期の正常マウスにGPX4阻害薬を投与した場合、破骨細胞が過剰に活性化し、成長期においても骨量および骨密度の増加が抑制されると予測される。最終年度は、細胞実験を主に、閉経により(エストロゲン欠乏)生じる骨密度低下の新規作用機序を検討する。
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Causes of Carryover |
研究所の東京から大阪への移転が遅延し、研究を行う時間が大幅に減少した。その結果、次年度使用額が生じた。 ただし、研究計画を柔軟に変更することで、今年度の目的を達成するに至った。
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