2022 Fiscal Year Research-status Report
有歪み復号転送を用いた非信頼中継ネットワーク物理層セキュリティに関する研究
Project/Area Number |
21K17738
|
Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
騫 申 神奈川大学, 情報学部, 助教 (80868331)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 物理層セキュリティ / 非信頼中継 / 有限長ブロック符号 / ダイヤモンドネットワーク / reliable-and-secure確率 |
Outline of Annual Research Achievements |
有限長ブロック符号を想定した非信頼中継ネットワークの物理層セキュリティ性能を調査した。従来の復号転送とは異なり、非信頼中継ネットワークは有歪み復号転送プロトコルを考慮している。有限長ブロック符号の特徴に基づき、非信頼中継ネットワークの物理層におけるセキュリティ性能は、信頼性と安全性の両方を考慮したreliable-and-secure確率(RSP)を用いて評価した。送信局と中継局の送信電力の寄与が釣り合う限り、非信頼中継ネットワークにおけるショートパケット通信では、一定の確率で信頼性と安全性を確保可能であることがわかった。
また、信頼性と安全性を同時に保証することを目的として、2つの非信頼中継(潜在的な盗聴者)を持つダイヤモンド型ネットワークにおけるショートパケットの通信性能を調査した。有限長ブロック符号伝送の特性を考慮し、解析的なアプローチを用いて信頼性と安全性を評価した。送信局から中継局への伝送はソース・チャネル分離定理、中継局から宛先局への伝送はCEO(Chief Executive Officer)問題として解析し、RSP確率を求めた。協調妨害信号(Cooperative Jamming)や人工ノイズ(Artificial Noise)のサポートがなくても、送信局-中継局伝送と中継局-宛先局伝送の寄与がバランスしていれば、最適なRSPが達成されることが判明した。
さらに、ダイヤモンド型非信頼中継ネットワークにおいて、協調妨害信号を新たに検討した。協調妨害信号は非信頼中継が機密情報を漏洩するのを防ぐために、宛先局から意図的に送信される。協調妨害信号のアシストより、優れた信頼性と安全性を達成することができることが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①非信頼中継ネットワークにおけるショートパッケージ伝送の信頼性と安全性パフォーマンスを解析した。PHYセキュリティを強化するために、有歪み復号転送プロトコルを考慮した。ショートパケット通信の特徴に基づき、信頼性と安全性を示すreliable-and-secure確率(RSP)を性能指標としてパフォーマンス評価した。ブロック長が無限の場合、発信局-中継局リンクと中継局-宛先局リンクの寄与が釣り合う限り、最大のRSP確率が得られることが確認できた。この研究成果は国際会議論文としてIEEE CCNC2023に発表された。
②ダイヤモンド型非信頼中継ネットワークにおけるショートパッケージ伝送の信頼性と安全性を解析した。2つの非信頼中継には、有歪み復号転送プロトコルを利用する。信頼性と安全性を考慮しているRSPを計算した。発信局から2つの非信頼中継への伝送と2つの非信頼中継から宛先局先への伝送の寄与がバランスしたときに最大のRSPが得られることが示された。研究成果は1編の学術雑誌論文としてIEEE Accessに発表された。
③2つの非信頼中継を持つダイヤモンド型ネットワークにおいて信頼性と安全性を解析した。ただし、宛先局から送信される協調妨害信号は、送信元のオリジナルメッセージを解読するためのサイド情報として利用される。協調妨害信号のパワーが強くなると、優れたRSP性能が達成できることがわかった。研究成果を学術雑誌論文IEICE ComEXおよび2023IEICE総合大会に報告された。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって、最大のRSPは発信局-中継局伝送と中継局-宛先局伝送の寄与が均衡しているときに達成されるため、各送信ノード間に最適な電力配分の検討は非常に興味深いテーマとなる。また、多端子CEO問題解析と複数情報源Slepian-Wolf定理を利用して、多数(3つ以上)の非信頼中継を持つネットワークの信頼性・安全性分析を試みる。さらに、指向性変調、隠蔽無線通信、インテリジェント反射面を含む他のセキュアな通信方式との性能を比較するとともに、ソフト定義無線による理論結果の検証やフィールドテストが計画されている。
|
Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由) 国際会議発表に係る旅費を計上していたが、予定より少額で支出したため、次年度に繰り越した。 (使用計画) 未使用額は次年度国際会議発表の旅費とオープンアクセスジャーナルの出版費を含む論文の掲載料に充てることにする。
|