2021 Fiscal Year Research-status Report
革新的信頼性を持つニューラルネットワーク力場の作成とその2次元層状物質への応用
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21K17752
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
中野 晃佑 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (50870903)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / 電子状態計算 / 第一原理計算量子モンテカルロ法 / 密度汎関数法 / ニューラルネットワークポテンシャル |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、多体シュレーディンガー方程式を厳密に解く第一原理量子モンテカルロ法のオリジナルな計算コード”TurboRVB”を、世界中の研究者と共同で開発し [K. Nakano et al., J. Chem. Phys. 152, 204121 (2020)]、従前法では太刀打ちできない物質の電子状態を研究してきた。本研究では、複数の空間スケールを跨ぐ「マルチスケール計算」にまで視野を広げ、申請者が追究してきた電子階層での厳密性が, より大きな空間スケール (i.e., 分子動力学階層)においても重要な役割を果たすことを明らかにする。今年度は、高圧水素に対して、第一原理量子モンテカルロ法に基づいて作成した機械学習力場を適用することに成功した。高圧水素の相図は、機械学習力場の精度に極めて敏感に反応するため、従来法のニューラルネットワークを利用した手法では、所望の精度、つまり、第一原理量子モンテカルロ法の結果を再現する機械学習力場を構築することができなかった。そこで、SOAP(Smooth Overlap of Atomic Positions)に基づくカーネル法を利用したコードを独自に開発した。それを利用することで、第一原理量子モンテカルロ法の結果を再現する機械学習力場を構築でき、従来よりも低コストで、第一原理量子モンテカルロ法の精度で高圧水素の相図研究を可能とした。機械学習力場作成にあたっては、第一原理量子モンテカルロ法に基づいて力を大量の原子配置に対して計算する必要があった。この点に関して今年は、TurboRVBの計算をハイスループット化するワークフローパッケージTurbo-Geniusの開発と、拡散量子モンテカルロ法に基づく力の計算を確立した点で大きな進捗があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、高圧水素の相図研究に対して、第一原理量子モンテカルロ法に基づいて作成した機械学習力場の作成に成功するところまで到達しており、第一原理量子モンテカルロ法に基づく機械学習力場作成の方法論を確立したという点で当初の計画以上に進展していると言える。また、機械学習力場作成にあたっては、第一原理量子モンテカルロ法を利用し、原子に働く力を大量の原子配置に対して計算する必要がある。この点に関して、今年は、TurboRVBの計算をハイスループット化するワークフローパッケージTurbo-Geniusの開発を進めた点についても、当初の計画以上に進展している。また、学習データとなる第一原理量子モンテカルロ法の学習データを作成する際、第一原理変分量子モンテカルロ法を使うと、変分最適化に伴う極小値問題が現れるが、今年度は、第一原理拡散量子モンテカルロ法による原子に働く力の計算方法も確立することができ、よりシステマチックで再現性のある、第一原理量子モンテカルロ法に基づく機械学習力場作成手法を確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、作成した機械学習力場作成コードはcubicセル(つまりすべての角度が90度)のみ対象としている。今後、より複雑な化合物に応用するために、これを任意のセルに適用できるように拡張する予定である。また、現在の計算コードは、単一の元素種にのみ対応している。この点に関しても、今後は、複数元素種にも対応可能なように、コードを改変する計画である。来年度以降、第一原理量子モンテカルロ法に基づく機械学習力場作成対象の化合物としては、引き続き高圧下の水素を対象とすると共に、より複雑な化合物、グラフェンや、高圧下高温超伝導体水素化物も対象とする計画である。
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Causes of Carryover |
物品に関しては、物流の乱れから今期中の納品が困難と判断し、来年度以降に計上することにした。 旅費・人件費に関しては、オミクロン株の出現により、コロナ禍が収束することを見越して計上したこれらの費用が今年度は利用できなかった。来年度以降は、確実にコロナ禍は収束に向かうと見受けられるので、計画に記載した通り、旅費・人件費予算の執行を行う予定である。その他の費用に関しては、投稿中の論文の査読が遅れており、オープンアクセス費が計上できていないことに伴う。論文が採択され次第、来年度以降、オープンアクセス費用として計上する計画である。
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