2023 Fiscal Year Research-status Report
ロバスト統計を考慮した深層距離学習と強化学習の統合に基づく異常音検知手法の開発
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21K17771
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
玉森 聡 愛知工業大学, 情報科学部, 准教授 (20733512)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 異常検知 / 深層距離学習 / ロバスト多変量解析 / ロバスト統計 / projection depth |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度もロバスト統計に基づく外れ値検知アルゴリズムの研究開発に取り組んだ。昨年度はprojection depthと呼ばれる順序統計量に注目する外れ値検知手法の開発に取り組み,サンプルデータ群がクラスタを構成するような場合に検知性能が顕著に低下する問題に対処することができた.しかしながら,依然としてサンプルデータ群が多峰性を有していたり,非凸性を有しているなど線形分離不可能な状態には対応できない問題があった.そこで,randomprojection Depth (RPD) の拡張としてKernel Random Projection Depth(KRPD) を開発した.RPDは,RPDを再生核ヒルベルト空間(RKHS)上で計算し,非線形分離可能なデータクラウドにも対処できるようにしている.カーネル関数を用いて元の特徴空間をRKHSにマッピングし,さらにKPCAを用いて次元削減を行う.これにより計算効率を向上させながら,高次元空間における直交性問題をも回避することができる.研究成果は国際会議APSIPA ASC 2023にて発表した.
また前年度から引き続き,深層距離学習を考慮した異常音検知アルゴリズムの研究開発にも取り組んだ.2022年度の調査研究により,異常音検知モデルの入力特徴量に位相スペクトルが有効に活用できることを確認している.そこでは音データに含まれる位相変動を考慮するための複素数値ニューラルネットワークが用いられた.この複素数値ニューラルネットワークに距離学習を組み込むことは自然な拡張であり,有効性もまた確認することができているが,研究成果の対外的な発表には至っていない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度から引き続き,ロバスト統計を考慮した外れ値検知アルゴリズムについて,研究成果を論文として対外発表することができた点は自己評価できる.研究計画にある教師なし学習と教師あり学習の統合に関して文献調査と予備的な実験と検討を進めており,「自己教師あり学習」という枠組みがその端緒となる見込みが立った.ただしガンマダイバージェンスを軸とした異常検知の学習アルゴリズムは達成できていない.この点で進捗は遅れているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
異常音検知モデルの学習アルゴリズムを「自己教師あり学習」という枠組みにまとめる.異常音検知では,正常音と異常音のラベル付けが非常に手間がかかる.自己教師あり学習を用いることで,大量の未ラベル音声データから有用な潜在表現の獲得が期待できる.また異常音には多様なパターンが存在するが,教師あり学習では,あらかじめ用意した異常パターンしか学習できないという欠点が存在する.一方で自己教師あり学習では,データから自動的に異常音のパターンを抽出できるため,より幅広い異常音への対応が期待できる.自己教師あり学習の枠組みに,これまでの研究で得られたdepthに基づく手法を組み込むことで,学習アルゴリズムを完成に近づける.
長期間に渡って継続的な検知精度向上を実現可能にする枠組みに「継続学習」がある.これにより機械学習モデルの破滅的忘却を防ぎつつ,自己教師あり学習によるロバストな学習アルゴリズムの実現を目指す.
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Causes of Carryover |
2023年度の主な支出は国際会議での研究成果発表にかかる旅費の支出および文献調査のための図書購入であった.2024年度も研究成果をまとめたものを国際会議に投稿予定であり,採択されたあかつきには旅費を多く使用する予定である.また計算サーバーや大容量ストレージについての購入は見送ったが,最終年度の環境構築に重点的に使用する予定である.
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