2021 Fiscal Year Research-status Report
サイズ制約付き極小部分集合列挙問題に対する多項式遅延近似列挙アルゴリズムの研究
Project/Area Number |
21K17812
|
Research Institution | National Institute of Informatics |
Principal Investigator |
栗田 和宏 国立情報学研究所, 情報学プリンシプル研究系, 特任研究員 (40885266)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 近似列挙 / 多項式遅延列挙 / サイズ制約 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は列挙アルゴリズムに関する3編の論文を執筆し,うち1編がデータベース分野のトップ会議であるPODS 2022に採択された.また,列挙アルゴリズムの新たな応用として,ある離散構造の重み和が重い順に上位k個を効率良く計算するアルゴリズムが存在すれば,そのアルゴリズムを用いて多様な組合せ構造を発見する効率良い近似アルゴリズムを開発した.この結果も論文化して現在国際会議に投稿中である. 列挙アルゴリズム,特に最適化制約を加えた列挙問題に対する近似的な列挙アルゴリズムについては,入力制約問題という特殊な列挙問題が解ける問題に関して,効率良い近似列挙アルゴリズムを与えた.この結果は現在アルゴリズム分野の学術雑誌であるdiscrete applied mathematicsに投稿中である.さらに,この論文で開発した技法を適用できる新たな問題も発見した.具体的には極小な連結辺支配集合が近似的に列挙できることを明らかにした.列挙において頂点に関する連結性を扱うことはしばしば困難になるため,本研究では辺に関する連結性を持つ問題に関して列挙アルゴリズムが構成できるかどうかを研究した.この結果は現在プレプリントとして公開している. また,近似的な列挙アルゴリズムは列挙の困難性と最適化の困難性を同時に持つため,近似的な列挙アルゴリズムの研究のためには最適化制約を除いた場合の列挙の研究を深めることも重要である.そこで,本年度は極小なシュタイナー木という辺の連結性に関するグラフの構造に対し,効率良い列挙アルゴリズムの研究を行った.この構造の列挙は2000年台中盤にデータベース分野でも行われており,グラフアルゴリズム分野以外でも興味が持たれている問題である.今年度はこの問題に対して線型遅延の効率良い列挙アルゴリズムを与え,PODS 2022に採択された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は近似的な列挙に関する論文を2編の執筆と投稿,極小な部分集合に関する列挙に関する論文を1編を出版することができた.これらの結果は申請時に公開していたプレプリントの結果が元になっており,超グラフ技法で培った知見を用いて得られた結果である.また,現在プレプリントを公開中の極小な連結辺支配集合の近似的な列挙についてはCKS性を持たない,つまり入力制約問題を多項式時間で解くことができないが,多項式遅延かつ定数近似比で列挙ができることを明らかにした. さらに,列挙アルゴリズムの応用として多様な解の発見という人工知能分野で興味が持たれている問題との関係を発見することができた.特に,このような列挙アルゴリズムが,多様な解の発見という見た目が大きく違う問題を解くため道具として有用であると示すことは,申請書にあるように,他分野への列挙応用への基盤となると考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度では解グラフ技法を元にする近似的な列挙アルゴリズムの開発を行なった.これらの結果は列挙アルゴリズム分野で用いられる技法だけを用いて得られた興味深い結果であると考える.しかし,近似アルゴリズムの設計技法は数多く存在し,これらのアルゴリズム設計技法から得られる知見も多いのではないかと予想する.事実,近似的な列挙とは多少問題設定は異なるが,トップ-k列挙分野においては最適化アルゴリズムと列挙アルゴリズムの両者の技法を組合せたアルゴリズム設計技法というのは一般的である.そこで,今後の研究の推進方策として,超グラフ技法による列挙アルゴリズムの研究に加え,近似アルゴリズムの技法を取り入れたアルゴリズム設計ができるかどうかを検討する.
|
Causes of Carryover |
当初の予定では年度末には国内での出張が可能になると予想していた.しかし,コロナウィルスの影響が予想よりも長引いたため,国内のイベントが軒並み中止,もしくはオンラインになったため,予想するよりも旅費での支出が少なくなった.そのため,20万円程度の次年度使用額が生じてしまったが,これらの予算は国内旅費または図書の購入に当てる予定である.
|
Research Products
(10 results)