2022 Fiscal Year Annual Research Report
細胞、脳、群れにおける適応的な自己維持のダイナミクスと情報的閉包
Project/Area Number |
21K17822
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
升森 敦士 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (10870165)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Downward causation / Transfer entropy / Causal emergence / ボイドモデル / 自己組織化 / 群れ / ホメオスタシス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主に群れにおけるミクロスケールとマクロスケール間の情報流の解析を中心に行った。例えばボイドモデルのような群れの構成要素が常に変化しているようなケースでは、通常、小さな群れとそれらが集まったより大きな群れとの間の情報流を各エージェントの状態から計算するといったことは困難である。そこで本研究では、ボイドモデルの大規模な群れ(1.6万~50万)のデータを用いて、空間を格子状にいくつかのスケールで粗視化したうえで各セル間のトランスファーエントロピーを計算することで解析を行った。各スケール間の情報流を計算した結果、あるスケール間ではミクロからマクロ(Upward)よりもマクロからミクロ(Downward)の情報流が高くなることが分かった。さらに局所的な情報流をみると、あるスケール間では、群れの内側ではDownwardが高く、群れの表面ではUpwardが高いなどの構造が見えてきている。Upwardが高い場合は自己組織的なプロセスで、Downwardが高い場合は秩序状態であると捉えることができ、ボイドモデルの群れの場合は、群れの表面で自己組織化が生じ、群れの内部はその構造によって秩序状態が維持されている可能性が示唆された。
このように空間を粗視化して群れのデータを扱うことで、スケール間の情報流を計算するという手法を提案し、スケール間の階層的な情報流について解析ができた。この結果、群れの自己維持に関する示唆が得られている。この成果は国際学会ALIFE2023 で発表することが決まっている。前年度のスパイキングニューロンと情報的閉包に関する成果は国際雑誌に投稿済みである。このように脳と群れに関する研究に関しては計画通り一定の成果が得られた。細胞の自己維持に関しては、化学反応ネットワークによる刺激を避けるための学習のモデル設計を行なっており、今後シミュレーション実験を行う予定である。
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