2021 Fiscal Year Research-status Report
Understanding statistical properties of extreme phenomena based on the burst mechanism and its application to prediction
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21K17825
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中川 正基 大阪大学, 情報科学研究科, 特任講師(常勤) (80649202)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 極端現象 / 少量データ / カオス力学系 / ホモクリニック・ヘテロクリニック軌道 / 無限峰写像 / ランダム化写像 |
Outline of Annual Research Achievements |
地震・気象・経済などでみられる極端現象に対して,少量のデータを前提とした予測方法論が必要とされている.本研究では,このような極端現象に対して力学系理論の立場からアプローチし,バーストメカニズムの振る舞いを反映した低次元力学系(無限峰写像力学系)により極端現象の統計的性質を理解し,それに基づいた少量データによる極端現象の新しい予測方法論の開拓を目指している. 初年度はまず,バーストメカニズムのひとつであるホモクリニック軌道の近傍に埋め込まれているPacifico-Rovella-Viannaの2次元無限峰写像力学系(以下,PRV写像)による間欠的挙動の統計的性質の理解に取り組んだ.特に,M. Nakagawa, JPSJ, 2015で既に解析が完了しているArneodo-Pacificoの1次元無限峰写像力学系(以下,AP写像)の統計的性質との違いに注目した.2次元写像であるPRV写像の点列は,ある点を中心に分布するため,中心からの距離rを観測変数としてAP写像と比較した.数値実験により以下の(1)~(3)の結果を得た: (1)PRV写像の変数rに関する定常分布は,AP写像から導かれた対数正規分布とは異なるパラメータ依存性をもつ. (2)PRV写像の変数rに関するラミナー継続時間分布は,指数関数減衰する裾をもつベキ分布である.但し,AP写像から導かれる指数-3/2のベキ分布とは異なる可能性がある. (3)PRV写像に含まれる周期関数の位相部分を確率変数によりランダム化したところ,元のPRV写像の各種分布(定常分布やラミナー継続時間分布)を再現することができた.つまり,PRV写像の間欠的挙動に関する各種分布は,このランダム化写像の解析によって導出することができる. PRV写像の間欠的挙動に関する各種分布の解析形は,極端現象の統計的“型”として,今後活用できると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度でPRV写像の各種分布(変数rに関する定常分布やラミナー継続時間分布)の決定方程式の導出まで完了したいと考えていたが,代表者の所属機関の異動などがあり,当初計画よりやや遅れる結果となった.ランダム化PRV写像は既に得られているので,2022年度はそれを用いて各種分布の決定方程式を導出し,極端現象の統計的“型”となる解析形(あるいは漸近形)を求める予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,まず2021年度の遅れを取り戻すべく,ランダム化PRV写像の解析を推進する.それと同時に,具体的な極端現象(気象系,光学系,機械系,化学反応系など)に対する支配方程式によるシミュレーションを開始し,低次元モデル(PRV写像)の振る舞いとの比較を進める予定である.
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Causes of Carryover |
2021年度は,情報収集のための学会や研究集会への旅費を計上していたが,コロナ禍のためオンライン開催となり,使用することができなかった.2022年度は,学会や研究集会への参加に加えて,関連分野の研究者との対面議論のための旅費や,所属機関の異動に伴う計算機環境の再整備(周辺機器の購入)に充てる予定である.
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