2023 Fiscal Year Research-status Report
Understanding statistical properties of extreme phenomena based on the burst mechanism and its application to prediction
Project/Area Number |
21K17825
|
Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
中川 正基 福岡工業大学, 情報工学部, 准教授 (80649202)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 極端現象 / 少量データ / カオス力学系 / ホモクリニック・ヘテロクリニック軌道 / 無限峰写像 / ランダム化写像 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、極端現象に対して力学系理論の立場からアプローチし、バーストメカニズムの振る舞いを反映した低次元力学系を活用することで、少量データを前提とした極端現象の新しい予測方法論を開拓することを目的としている。 2023年度は、2022年度に引き続き、バーストメカニズムのひとつであるホモクリニックバーストに普遍的に埋め込まれているPacifico-Rovella-Viannaの2次元無限峰写像力学系(以下、PRV写像)の理解に取り組んだ。以下に取り組みを列挙する。 (1)PRV写像の1次元無限峰写像近似(Arneodo-Pacifico写像[AP写像]近似)の数値計算、(2)PRV写像の特定パラメータ時の挙動の理論的証明、(3)エルニーニョ・南方振動(ENSO)のTimmermannらの数理モデルのバーストメカニズムの調査、(4)リザバーコンピューティングによる極端現象の発生時間予測の検討、(5)PRV写像の定常分布の臨界状態における漸近形の予想、(6)条件付きラミナー継続時間分布の導入、(7)条件付きラミナー継続時間分布と従来のラミナー継続時間分布の関係の導出、(8)区分線形化AP写像に対する条件付きラミナー継続時間分布の導出、(9)区分線形化PRV写像の導入 特に、今回導入した「条件付きラミナー継続時間分布」は、極端現象の新たな予測方法論に向けて役立つものであり、さらに考察を深めていきたい。ラミナー継続時間分布および条件付きラミナー継続時間分布は、AP写像に対しては区分線形化によって解析的な導出が可能であり、PRV写像に対しても同様に区分線形化を行い、解析的な導出を試みたい。 2023年度はまた、調査・議論のために、複数の研究集会へ参加し、さらにミニ研究会の企画も行った。少しずつではあるが対外活動も増えた年度であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度と同様に新しい予測方法論に必要なPRV写像の各種統計分布(定常分布やラミナー継続時間分布)の解析形あるいは漸近形の明確な結果が得られていないこと、また当初計画よりも学会などでの成果発表が乏しいことから、進捗状況はやや遅れているとした。PRV写像の統計分布が得られていない理由は、(1)統計分布の導出に役立つと考えていた「PRV写像のAP写像近似」が元のPRV写像とはかなり異なる振る舞いをすることが数値計算からわかったため、(2)PRV写像のAP写像近似はそもそも解析的な取り扱いが容易ではないことがわかったため、である。また、2023年度から本研究に組み入れた「リザバーコンピューティングによる極端現象の発生時間予測」については、構想はあるもののキャパシティ不足により、それを実行には移せなかった。
但し、着実に前進している点もある:(1)PRV写像の定常分布の臨界状態における漸近形の予想がついた点、(2)条件付きラミナー継続時間分布を導入し従来のラミナー継続時間分布との関係を導けた点、(3)区分線形化PRV写像を導入することでラミナー継続時間分布および条件付きラミナー継続時間分布の導出に希望が見出だせた点、などである。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、2023年度に導入した区分線形化PRV写像を活かして、それをランダム化した「ランダム化区分線形PRV写像」の解析を推進する。それにより、ラミナー継続時間分布および条件付きラミナー継続時間分布の解析形あるいは漸近形の導出が期待できる。また、PRV写像の定常分布の臨界状態における漸近形の予想がついたことから、その証明に挑戦する。これはAP写像における証明[Nakagawa, 2015]と同様の方針で証明できると考えている。また、2023年度に導入した条件付きラミナー継続時間分布は、新しい予測方法論において中心となり得る概念であると考えており、関連研究の調査、更なる拡張を行っていきたい。また、リザバーコンピューティングによる極端現象の発生時間予測についても、プロトタイプ実装など着実に進展させていきたい。 さらに、学会などでの対外的な成果発表も増やし、論文執筆への意識も高めていきたい。
|
Causes of Carryover |
2023年度は、調査や議論のため複数の研究集会に参加し旅費に使用したものの次年度使用額が生じた。その理由は、(1)理論研究の遅れのため計算機環境の拡充に気が回らず周辺機器購入のための消耗品費を使用することができなかった、(2)進捗状況の遅れにより論文発表のための英文校閲料や論文投稿料を使用することができなかったためである。2024年度の使用計画としては、引き続き学会や研究集会へ積極的に参加することに加え、(1)関連分野の研究者と積極的に対面議論すること、(2)計算機環境を意識的に拡充していくこと、(3)論文執筆に着手することにより英文校閲を受けること、を考えている。
|