2021 Fiscal Year Research-status Report
生命の適応的生存戦略のモデル化を通じた創造性の解明
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21K17839
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
谷 伊織 神戸大学, 情報基盤センター, 助教 (70751379)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 真性粘菌 / 創造性 / 逆Bayes推論 / 適応的行動 / Physarum polycephalum |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は真性粘菌 Physarum polycephalum の変形体が示す高度な適応性に着目し,想定外の事態に対する生物の適応的行動の発現を「創造的」行動と見なす.これらを数理モデル的に再構成し,理解することを通して創造性のモデル的理解を見出すことを眼目としている. 初年度の研究では,これまで申請者が開発してきた粘菌モデルに対して,確率空間の収縮と弛緩を意味するBIB推論(Bayes推論およびInverse Bayes推論=逆Bayes推論)の機構を組み込むことに成功した.これは,原型質流動において,「流動それ自身が続く流動に対してポジティブなフィードバックを持つ」や「粘菌のネットワークのグローバルな附置が局所のネットワークに影響する」といった,現実的な粘菌の流動機構を整合的に表現している.これによって,実際の粘菌において見られる忌避領域で囲まれた閉領域からの突破的脱出や,誘引物質勾配に敢えて逆らうような挙動が再現されることが確認された.後者については,「U字型トラップ課題」と呼ばれるもので,ロボット工学などで,セルフナビゲーションの課題として知られるものである.粘菌がU字型トラップ課題をクリアするためには,誘引物質勾配に敢えて逆らうような運動を実現する必要があるが,本研究のモデルはこれに成功している.これは,勾配方向に運動することで最適化を実現しようとする近年の機械学習の手法と大きく異なるものであり,これらの分野と接続可能かどうかを引き続き検討する.これらの結果は2021年12月に開催された共創学会年会で報告しているとおりである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた基本的モデルの構築は完了しており,当初の計画に沿って進行している.今後は,2021年度内に整備した計算機リソースを活用して,より精緻な計算機実験を実施し,当該モデルの妥当性を確認する予定であるが,計画時において想定していなかった実験内容についても,研究の進展を通して,重要であることがわかったため,計画に追加して実験を行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り,基本的モデルの構築は完了しているため,科研費で整備した計算機リソースを活用して,より精緻な計算機実験を実施する.なお,当初計画には含まれていなかった「U字型トラップ課題」については,初年度の研究により,本テーマにおける重要性が明らかになったため,計画に組み入れて実験を行なっていく予定である. また,当該年度内に,初年度の結果について論文化する予定である.
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Causes of Carryover |
2021年度において新型コロナウィルスの感染状況が改善しなかったため,年末に予定されていた学会や研究会がリモートとなったことにより,旅費の支出が進まなかったこと.初年度内での研究成果の論文化ができなかったため,英文校正費用などが繰り越されたことによる.
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Research Products
(1 results)