2023 Fiscal Year Research-status Report
転写酵素の遺伝子間動態に基づく細胞分化モデルの構築と実データによる検証
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21K17851
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
梶田 真司 福井大学, 学術研究院工学系部門, 助教 (40804191)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 転写 / 遺伝子発現 / 細胞分化 / アクティブマター / パターン形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度に引き続き、遺伝子上の転写酵素の移動を考慮した遺伝子発現モデルについて検討を行なった。本年度は、特に転写酵素の移動速度を調整するエピジェネティック修飾状態に着目し、統計力学に用いられる理論を援用してエピジェネティック修飾状態と細胞分化状態の関係性を明らかにするための理論モデルについて検討を行なった。さらに、この理論モデルの検証に向けて、実験系の共同研究者から提供された、次世代シーケンサーを用いて取得したエピゲノムデータの解析も行ない、転写酵素のダイナミクスとエピゲノムの関係性を解析するデータ解析手法について検討した。
加えて、本研究で取り組んだ数理的手法を一般化することで、新規のパターン形成メカニズムを発見することに成功した。粒子が確率的に移動する(ゆらぐ)ことと、そのゆらぎの大きさが粒子自身が放出する分子の濃度に依存することだけから、粒子間に直接的な反発力が働かなくても粒子の整列が起こることを理論的に明らかにした。これは熱力学や統計力学におけるエントロピー力に似た仕組みであることから、この実効的な反発力をアクティブ熱力学的力と名付けた。この成果をまとめた論文をプレプリントサーバーarXivに投稿し(arXiv:2305.05553)、その後Physical Review Research誌にLetterとして掲載されることが決まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に加え、理論モデルの一般化により新たなパターン形成メカニズムの発見に成功している。これは当初の計画では想定していなかった成果であり、順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の計画にあった通り、理論モデルの構築と実験データ解析を進め、転写酵素のダイナミクスの観点から細胞分化を理解することを目指す。
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Causes of Carryover |
論文掲載時期の遅れや予定していた海外出張の取り止めなどで次年度使用額が生じた。
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