2022 Fiscal Year Research-status Report
大規模プロテオーム解析による俯瞰的がんシステム理解に向けた解析基盤の構築
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21K17852
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宇野 光平 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 助教 (50873585)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プロテオミクス解析 / 欠損値補完 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロテオミクス解析は、LC-MS/MSを用いたタンパク質存在量推定技術によって網羅的な解析が可能となった。ただし、LC-MS/MSによる存在量の推定には欠測値が多く生じるという問題点がある。そこで発現差異解析などの統計的手法を適用するためには、欠測部分に推定値を代入する欠測値補完が前処理として必要になる。 これまでに多くの欠測値補完手法が提案されていることから、どの手法がプロテオミクス解析のための前処理として有用かを検証するシミュレーション研究が行われている。ところが、これらの性能比較研究で用いられる指標は、データ点の再現を評価するRoot Mean Square Error (RMSE) が中心であり、t検定に用いるパラメータである各タンパク存在量の分散や平均には着目していなかった。実際にシミュレーション研究によって検証したところ、これまでに用いられてきた代表的な欠測値補完手法を適用した後の補完後データでは分散が過小推定されるという分散バイアスが存在することが明らかとなった。分散の過小推定はt検定の偽陽性につながる恐れがあるため、補正が必要となる。 このようなバイアスが見過ごされてきた原因の1つに、評価指標の欠如が考えられる。そこで、まずは欠測値補完を評価するための新たな指標を開発した。新たに開発した指標では、分散や平均などデータ点ではなくデータ構造の再現を評価する。さらに、指標の基準に基づいて最適な分散バイアス補正の手法を開発した。この手法はすでに欠測値補完された補完後データの過小分散を補正するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の有用性と応用可能性を探るためシミュレーションやデータ解析を通じての検証を重ねていた。そのため、論文投稿まで多くの時間を要してしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまとまった研究成果を学会発表するとともに、学術雑誌に論文を投稿する。
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Causes of Carryover |
目標としていた研究成果の学会発表、そして論文投稿および論文採択にまで辿り着けなかった。そのため、学会旅費や論文掲載費として予定していた金額を使うことができなかった。次年度に学会発表や英文校正費、そして論文掲載費として使用することを予定している。
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