2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K17858
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
松本 拡高 長崎大学, 情報データ科学部, 准教授 (90782045)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 系統解析 / ネットワーク解析 / グラフフーリエ変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に続き、配列情報等からサンプル間の類似性グラフを構築し、グラフ信号処理の一種であるグラフフーリエ変換の理論に基づいて系統解析を行うための技術の開発に取り組んだ。これまでの系統解析では、基本的に系統樹を再構築し、再構築された系統樹上での表現型の進化などを解析するtree-thinkingなアプローチが主流であった。一方で、ウイルスなど進化が早いサンプルを対象にする場合、系統樹を一意に推定することが困難な場合が存在する。そこで本研究では、木構造を一意に定めず、類似性ネットワークのままで表現型の関連性を解析するnetwork-thinkingなアプローチを提案した。今年度は、昨年度に引き続きA型インフルエンザウイルスのserotypeや地域、宿主の関連性や、ウイルスの持つ遺伝子共有情報の実データに対して提案手法の有効性を検証した。その結果、提案手法ではこれまでにパンデミックを引き起こしたserotypeやそれに付随する情報をネットワークから抽出できる他、serotypeのより細かな構造の存在を示唆する結果が得られるなど、network-thinkingが系統解析に有効であることを示した。これらの結果は論文としてまとめ、現在投稿中である。このようなnetwork-thinkingは木構造を決めることが困難な対象に対し有効な解析方法を提供することが期待され、現在は免疫レパトアなど、一般的な進化系統樹にとらわれず、より広く応用できないかを検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はグラフフーリエ変換に基づく系統解析手法の実データを用いた検証を一通りまとめた。これら結果は、第11回生命医薬情報学連合大会(IIBMP2022)で口頭発表を行うとともに、研究結果を論文にまとめて投稿に至っており、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発したグラフフーリエ変換に基づく系統解析法は、他のデータに対しても有効な解析アプローチを提案できると期待される。以上のことから、免疫レパトア解析などに対し本手法の有効性などを検討する。 また、上記の開発技術とは別に、配列の類似性などが与えられた状況においては最適輸送理論が活用できる可能性がわかってきた。このことから、今後は最適輸送理論を用いた系統解析の可能性も別途検討する。
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Causes of Carryover |
現在論文を投稿中であり、採択された場合の出版費用を確保していたが、2022年度中には採択されなかった。2023年度に採択されることを目指し、その場合の出版費を確保すべく次年度へと繰り越した。
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