2022 Fiscal Year Research-status Report
心理誘導型の探索技術の応用により人との暗黙的な結託を図れるゲーム人工プレイヤ開発
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21K17872
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Research Institution | Sasebo National College of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 直之 佐世保工業高等専門学校, 電子制御工学科, 准教授 (30826889)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ゲーム情報学 / エンターテイメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はゲームにおいて人間プレイヤと,言葉を用いずに「結託」を持ち掛けるニュアンスを伴う行動をとらせることで,より心理的な相互作用を人間側に感じさせるコンピュータプレイヤの作成を目指すものである. 【対外発表】今年度の発表実績は1件である.国内研究会である『Game Programming Workshop 2022』のポスターセッションで,研究成果の発表を行った.その際の,様々な研究者や他機関の大学院生との議論により,研究方針に関する有益な知見を得た.例えば,発表の段階における提案手法のコンピュータプレイヤの着手は,麻雀競技時のゲーム序盤における着手にあからさまに不自然なところが見られるという指摘が得られた. 【コンピュータプレイヤの実装】モンテカルロ木探索により麻雀の着手生成を行うコンピュータプレイヤを作成した.このプレイヤには提案手法による拡張が施されており,「相手の認識する不完全情報(例えばこちら側の手牌内容)」に適当な仮の値を割り当てて,それから「相手は相手の認識する情報の中で合理的な行動判断を行う」という仮定のもと,将来のゲーム状況の様子を推測する.この工夫によって,本研究の実装によるコンピュータプレイヤは,「自分と相手の両方が得になるような情報開示」をあえて行い,特定の相手プレイヤとの結託を狙うことができる. 【自作局面を用いた着手生成実験】上記の実装プレイヤに,こちらが用意した1つの架空の麻雀局面の中で着手生成を行わせる実験を行った.その結果,「他プレイヤに結託を提案する」ようなニュアンスを帯びた行動が生成される事を確かめた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度の報告における「ゲーム知識の学習」と「既存の麻雀AI開発環境の利用困難」が,今年度も続けて尾を引いている. 【ゲーム知識】麻雀で2人のプレイヤが暗黙のうちに結託を持ち掛ける,という駆け引きが見られるのは,かなり高いレベルの上級者同士間での対局においてのみである.インスタントな付け焼刃の知識学習でこうした駆け引きの感覚は身に付かず,昨年度から続けて学習を続けている状況である. 【環境開発】既存の麻雀AI開発環境が利用できないため,その環境の自作を今年も継続して行っている. 【今年度の対処】今年度はひとまずの研究会発表を行うために,その発表に最低限の研究成果が得られるだけのミニマムな環境の実装および,自分のゲーム知識内で準備できるだけの,なるべく簡単な(しかし,あまり現実的ではない架空の)実験用局面にてデータの取得を行った.これらはあくまで,とりあえずの途中の成果報告を行うためだけの緊急的な措置であり,今後,更に信頼できる実験結果を得るためにはより多くのコーディングを行う必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の計画にあった「ひとまずの国内研究会での成果発表」は達成した.このまま,実装と実験を継続することで,更に信頼できる良質なデータの確保および優れた性能のコンピュータプレイヤ開発に努めたい. 最も初期に予定していた,ボードゲーム『カタン』における手法適用とデータ取得は中止する.『カタン』も興味深い対象問題であり,麻雀とカタンの両方で提案手法の有用性が示される事には価値があるが,作業の費用対効果が十分に高いと言い難い.麻雀における手法開発と実験データの取得だけでも,「十分に高度で複雑な問題における多様なデータ取得」が行われる上に,カタンの環境開発と提案手法プレイヤ実装にも1年以上の作業期間が必要と見積もれるため,本研究テーマは麻雀を用いた実装と実験にのみ労力を集中する. 麻雀を用いた研究を進めた上で,その成果を国内研究会または国際会議にて発表する.十分に信頼性の高い結果となった場合にのみ論文誌への投稿を検討するが,この研究テーマで扱う「暗黙的な結託の持ち掛けと承諾」という現象は心理的な類のもの(をコンピュータプレイヤにより再現させるもの)であり,客観的な裏付けを与えることが難しい.そのため研究会や会議への原稿の投稿による成果報告のみを主眼に考えている.
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Causes of Carryover |
研究当初に想定していた大型計算機と似たスペックの計算機がより安価で調達できる事が,研究を開始した後に判明したため. また研究作業の遅延により,論文の投稿および掲載費や,学会旅費などの多くが今年度は未使用となったため.
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