2022 Fiscal Year Research-status Report
Estimation of photosynthetic activity using solar induced chlorophyll fluorescence in a larch forest: Linkage of modeling and observations
Project/Area Number |
21K17873
|
Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
両角 友喜 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球システム領域, 特別研究員 (40866638)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | リモートセンシング / 放射伝達モデル / 植物生理生態 / クロロフィル蛍光 / 炭素循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
山梨県富士吉田市富士北麓Fluxサイト(FHK:35.4N, 138.8E)の観測タワーにおいて群落の太陽光誘起クロロフィル蛍光(SIF)連続観測を実施し、初夏にメンテナンスと校正を行った。現地個葉測定などモデル入力パラメータ収集を行った。さらに林冠構造の3次元モデルについて基礎データセットを作成し、検証に向けて取り組んでいる。太陽光誘起の条件における林冠構成種カラマツと林床に優占するシダ植物の個葉蛍光スペクトルを取得し、入力とした。蛍光スペクトル形状は同時計測した可視近赤外波長反射スペクトルから導出したクロロフィル濃度指標に応答し、葉の表(入射)側と裏(透過)側でとくに散乱寄与により740nmより長波長側の比率が異なることが分かった。またカラマツとシダとの差も確認され種間にみられる葉の構造に起因すると考察している。群落ではとくに日変化における蛍光の角度依存性について1Dモデルと3Dモデルを比較し、より林床の緑葉面積の相対値が低下し、林冠構造が個々の樹冠を3次元的に再現し複雑になるほど、異方向の検出性に差が生じやすくなることを示した。このモデルは現地観測に基づく個葉蛍光と林冠構造、地上SIF観測をつなぐだけでなく、より観測幾何が動的な衛星観測への検証にも役立つと期待される。この研究の進展について、国際学会での発表を行った。さらに今年度は8月に関東地方猛暑が発生しサイト付近の気象台でも記録的な高温条件がみられ、そのような中でのSIF-気温、大気飽差との関係をまとめた速報として口頭発表等を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は富士北麓Fluxサイトの高分解能分光放射計によるSIF連続観測と光合成の変動要因の解明について、CO2フラックスおよび微気象データとの解析などを予定していた。コロナ禍のため現地調査が一部十分ではない期間があった。CO2フラックスとの比較解析は期間内に完了しなかった。しかし酷暑年・平常年の2年間のSIFの気象要因応答をまとめ学会に成果発表することができた。太陽光誘起条件の蛍光スペクトル形状を測定し、3次元放射伝達モデル構築を行い、日変化のシミュレーションから群落構造の影響について初期的な考察を行い、国際学会で発表を行った。国際学会への積極的な参加が出来たことで先人研究者からのコメントを得られ、さまざまな機関との研究交流と今後の新規研究の可能性を広げた。このように一部に遅れも含むも全体としては進展した。
|
Strategy for Future Research Activity |
課題において収集した群落データに基づく3次元林冠構造のモデルと1次元的モデルの比較を引き続き行う。幾何配置と分光入力値、蛍光スペクトル形状、蛍光-光応答の感度分析から林冠構造にともなう、林冠上端において検出されるSIFの日変動および季節変動要因を明らかにする。 前年度の猛暑日前後の蛍光と光合成の光利用効率について気象データとともに多変量解析しストレス応答を検出する。またストレス応答について動的な蛍光収率を実装した放射伝達モデルを用いて群落構造・生理要因の解析を行う。さらにカラマツ林全体のCO2吸収量を求め数値モデルを検証する。さらに近年他の観測方法論の研究で提案された群落蛍光離避率の導出や対物距離に伴う大気吸収差の分離についてもあらたに検証を予定する。これらの結果をまとめることで群落構造要因やプロジェクトを通して明らかになった地上SIF観測のさまざまな課題点についてどのように考えていくべきか答えを出したい。研究成果を国内外に発表する。
|
Causes of Carryover |
社会的な感染症対策のため研究活動に一部縮小があったため旅費および物品費の使用額が減少した。次年度における海外学会発表は昨今の渡航費高騰のため予定よりも高額になると予想されており、その費用補填に利用することを考えている。そのほか論文投稿費などでの利用が見込まれる。
|
Research Products
(4 results)