2021 Fiscal Year Research-status Report
鉄マンガン酸化物中のテルル同位体比を用いた古海洋環境の復元
Project/Area Number |
21K17881
|
Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
深海 雄介 学習院大学, 理学部, 助教 (10754418)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | テルル / 同位体分別 / 鉄マンガン酸化物 / MC-ICP-MS |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄マンガンクラストに記録された現在から過去にいたる海洋環境の情報をテルル安定同位体比の変動から復元することを目的とする。本年度は現世の海水と接している鉄マンガンクラスト表面について、テルル同位体比の変動と海洋中の溶存酸素濃度にどのような関係があるかを調べた。同一海山の斜面に沿って異なる水深ごとに系統的に採取された鉄マンガンクラスト試料について、表面1mmを切削した粉末試料を作成し、同位体分析および化学組成分析を行い、水深プロファイルを作成した。海水中溶存酸素濃度の水深プロファイルが異なる海域に位置する、拓洋第5海山と拓洋第3海山の2つの海山について比較を行った。化学組成分析の結果、分析した鉄マンガンクラストは海水起源に分類される組成であり、本研究の目的に適した試料であることが確認できた。両海山における水深方向の同位体比の変化は、浅い水深領域においては水深が深くなるにつれて軽く、深い水深領域においては深くなるにつれて重くなるという同様の傾向があることが明らかになった。また、濃度の水深方向の変化傾向についても両海山は類似しており、浅い水深領域では急激な減少、深い水深では緩やかな減少に変化する同様の傾向がみられた。これらの2海山で同様の水深方向における変化の特徴から、同位体比変動を支配している現象が水深によって異なることが示唆された。一方で、水深方向における同位体比および濃度の変化傾向が切り替わる水深は、拓洋第5海山においては2000m付近、拓洋第3海山においては3200m付近と異なる水深であった。この変化傾向の切り替わる水深の違いは、2つの海山が位置する海域における海水中の溶存酸素濃度の変化傾向、特に溶存酸素濃度が極小となる酸素極小層が位置する水深の違いと対応している可能性がある。分析結果は論文としてまとめ、国際学術雑誌に投稿した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していた2海山の鉄マンガンクラスト試料の同位体分析とその比較について予定通りに進んでいる。また、次年度以降に予定している実験準備も並行して進められていることから、おおむね計画通りに進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度はテルル濃集を模した鉄マンガン酸化物への固液分配実験を行い、海水から取り込まれる際にどの程度の同位体分別が起こるのかを実験的に調べる。鉄酸化物、マンガン酸化物それぞれについて、表面吸着、共沈等の個々のプロセスで起こる同位体分別の大きさを明らかにするため、合成したこれらの鉱物に対して室内での固液分配実験を行い、化学分析および同位体分析を行う。
|
Causes of Carryover |
年度内に納品予定の海外製物品の納入が輸送関連情勢の影響で次年度へと遅延したため、その費用が次年度使用額として生じた。該当物品が納品され次第、当初の使用計画通りの購入費用に充てる予定である。
|
Research Products
(1 results)