2022 Fiscal Year Research-status Report
陸域における重元素同位体比変動と環境復元指標としての評価
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21K17882
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 茜 九州大学, 工学研究院, 助教 (30844659)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | クロム / 安定同位体 / 汽水域 / 化学種 / 有機物 / HPLC-ICP-MS / 環境復元 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,陸水試料のクロム同位体分析のための濃縮法として固相抽出ディスクを採用した手法を検討してきたが,汽水や海水のように硫酸イオンを多量に含む試料には適さないことが予備実験から分かった.そこで,今年度は新たに鉄(II)水酸化物共沈法と高感度MC-ICPMS分析の基礎検討を行った.濃縮法では,適切な共沈剤の添加量,pH,熟成時間を決定し,河川水および汽水試料で95-98%の回収率が得られる条件を決定した.装置条件検討では,sweepガス流量の調整により中分解能モードで約50-100 ng Crの微少量で分析可能であることを確認した.また,δ53Cr値が-5‰から+9‰の標準試料を作製し,DS-TIMSとMC-ICPMSの測定値の比較から分析値の妥当性についても確認した.しかし,陸水試料では,δ54Cr値とδ53Cr値 の非質量依存の関係が見られた.原因については今後究明していく. さらに,昨年度の調査より,流下に伴いクロムの価数変化が示唆された高知県の二つの河川において,河川水を採取し,クロムの存在形態および同位体比の変動を調べた.その結果,周辺から生活排水が流入しているK川では,流下に伴い塩濃度が増加するにつれて,全クロム濃度の減少,Cr(VI)からCr(III)への還元,δ53Cr値の上昇傾向が確認され,生活排水由来の有機物による還元および河川水からの除去が生じていることが示唆された.一方,周辺が農耕地域であるS川では,流下に伴い全クロム濃度は減少するが,クロムの価数および同位体比の変動はK川と比較して緩慢であった.これは,クロム濃度の低い河川水もしくは海水との混合による単純希釈がS川でのクロム濃度減少の主な要因であると考えられる.今後は溶存有機物濃度や微量元素濃度,懸濁物粒子中のクロム濃度の関係から化学種変化と同位体比変動の要因についてより詳細を明らかにしていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
溶存有機炭素濃度測定については異動に伴いやや遅れているが,その他の計画については概ね順調に進行している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,高純度試薬を用いてブランクの低減を試み,鉄(II)水酸化物共沈法の濃縮操作によるクロム同位体比への影響についても確認する.また,陸水試料の分析結果では,δ54Cr値とδ53Cr値 の非質量依存の関係が確認された.これは 54Crに対して38Ar16Oの干渉の影響が相対的に大きいことが要因として考えられる.これについては今後の検討課題である. 来年度は,河川堆積物や懸濁物質の採取を行い,河川水の流下に伴う存在形態および同位体比の変動について要因を明らかにし,先行研究との比較から陸水-海洋間でのクロム同位体比の保存性と環境復元プロキシとしての有用性について評価していく.
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Causes of Carryover |
新型ウイルス感染症拡大の影響および異動に伴い,外部機関での溶存有機物濃度分析の進行が遅れている.次年度は,本年度に予定していた分析にかかる消耗品費および同位体分析にかかる旅費に使用予定である.また,所属機関移動に伴い,本研究遂行に必要な実験設備と消耗品の購入,外部機関での実験のための旅費の支出に充てる予定である.
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Research Products
(4 results)