2021 Fiscal Year Research-status Report
ミミズの活動が森林土壌有機炭素の分解・貯蔵に与える影響の解明
Project/Area Number |
21K17884
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
田中 草太 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (50847217)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ミミズ / 土壌有機炭素 / 土壌団粒形成 / CO2 / 炭素・窒素安定同位体分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、ミミズが土壌からのCO2放出に与える影響を短期的および長期的に評価可能な培養実験系を構築し、土壌から放出されるCO2と形成される土壌団粒を定量評価した。ミミズを投入した土壌(ミミズ区)と投入しない土壌(対照区)を用意し、実験フェーズ1(~28日)とフェーズ2(ミミズ除去後:28~181日)を設けた。ミミズ区と対照区のCO2放出量と土壌団粒量を比較するとともに、土壌団粒サイズごとに炭素・窒素安定同位体比を分析した。その結果、実験初期~120日目までは、ミミズ区でCO2放出積算量が増大し、その後150日目以降はミミズ区のCO2放出積算量が抑制された。また、ミミズの活動によって、>2000μmの耐水性団粒が増加することが確認され、この団粒はコントロール区と比較して全炭素量が有意に増加していた。この団粒は、実験終了時の181日まで維持されることが確認され、長期的に炭素を隔離する可能性が示された。また、フェーズ2のミミズ区における>2000μmおよび >250μmの土壌団粒のδ15N値が、コントロール区と比較して有意に低い値を示したことから、ミミズ区では易分解性の炭素が団粒内に隔離され、長期的に分解されにくい状態を維持した可能性が示唆された。上記のことからミミズの活動により、初期段階では土壌有機物の摂食によって土壌からのCO2放出が促進されるが、長期的には炭素を貯蔵する効果をもたらし、CO2放出が抑制される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症対策のため、サンプリング規模と期間を縮小したものの実験に必要なサンプルをすべて揃えることができた。また、ミミズが土壌のCO2放出に与える影響を短期から長期にわたって評価可能な培養実験系の構築を完了した。今年度予定していた耐水性団粒の評価と炭素・窒素安定同位体比分析まですべて完了したため、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究結果から、ミミズが形成した土壌団粒は、長期的に分解されにくい状態を維持し、CO2放出が抑制される可能性が示唆された。これをより詳細に検証するため、ミミズが形成した土壌団粒の長期分解実験を実施する。この実験では、ミミズが形成した土壌団粒の存在割合によって、土壌からのCO2放出量が変化するかを解明するとともに、炭素・窒素安定同位体比分析により土壌団粒の分解特性を明らかにする。この実験により、ミミズが土壌有機炭素の分解・貯蔵に与える影響のメカニズム解明に繋げる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症対策のため、調査(サンプリング)の規模と回数が減ったことで人件費等の支払いが不要となった。また、予定していた学会がオンライン開催となったことで旅費の支払いが抑えられた。次年度使用額は、調査費用、新たな実験系構築費、および分析費に充てる予定である。
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