2022 Fiscal Year Research-status Report
放射線誘発組織障害に対する組織修復幹細胞の治癒効果と分泌小胞の関与
Project/Area Number |
21K17887
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
山口 平 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (00782822)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 急性放射線症候群 / 細胞外小胞 / マイクロRNA / 緊急被ばく医療 / 被ばく個体救命 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、放射線防護/緩和剤を処置した重度急性放射線症候群(ARS)発症マウスモデルを用いて、放射線誘発組織障害修復に対するMuse細胞または分泌細胞外小胞の機能・内在性因子との関連性を検討する。さらに、被ばく個体に対してMuse細胞または細胞外小胞を施すことによって、被ばく個体の造血再生や致死回避、長期的な有害事象発生の抑制が可能かどうかを検証する。アミフォスチン(AMF)やトロンボポエチン受容体作動薬ロミプロスチム(RP)、その溶媒として生理食塩水(NSS)を致死線量全身放射線ばく露(TBI)マウスへ被ばく前後で投与し、その生存個体の血清から被ばく後経時的に細胞外小胞を回収した。薬剤投与の致死線量放射線ばく露個体の脾臓では被ばく後経時的に間葉系間質・幹細胞の増加が認められた。TBI+RP個体から一週間毎に細胞外小胞を回収し、別のTBI個体へ投与を行ったところ、いずれの回収日においても有意な救命効果が認められた。その他、non-TBI+NSS、non-TBI+RP、TBI+NSS、TBI+AMF個体から回収した細胞外小胞では救命効果は認めれなかった。救命効果を示す細胞外小胞の内在分子の探索のため、TBI+RP個体由来の細胞外小胞とその対象としてTBI+NSS個体由来の細胞外小胞からTotal RNAを抽出し、マイクロアレイ解析によるmiRNAの網羅的発現解析を行った。有意な発現変動を示し、かつ2倍以上の発現量の変化を示したmiRNAは4種類(miR-144-5p、miR-3620-5p、miR-6354、miR-7686-5p)であり、定量PCR解析により、救命効果を示す細胞外小胞にはmiR-144-5pが、救命効果を示さない細胞外小胞にはmiR-6354が特異的に含まれていることが明らかとなった。また、脾臓における発現が最も高く由来臓器として候補に挙がっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射線障害及びその障害軽減/致死回避応答に特異的な細胞外小胞を特定し、その内在分子としてmiRNAだけでなく、タンパク質や由来臓器等も特定を進めている。また、特定した核酸を合成し、被ばく個体へ投与する救命効果の検証も進めており、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
致死線量放射線ばく露個体に救命効果をもたらす細胞外小胞と、その内在分子の網羅的解析を行っており、4種類のmiRNAまで候補を絞った。そのうちの一つ、miR-144-5pの被ばく直後および3日目に投与する2回投与で致死線量放射線ばく露個体の延命効果を見出している。今後、よりよい投与条件などの検討を行い、新たな被ばく医療の治療戦略としての可能性を模索していく予定である。
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Research Products
(6 results)