2021 Fiscal Year Research-status Report
春季親潮珪藻ブルーム期における海洋表面マイクロ層への物質蓄積メカニズムの把握
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21K17898
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
野坂 裕一 東海大学, 生物学部, 講師 (40803408)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 海洋表面マイクロ層 / 糖類 / 植物プランクトン / 親潮域 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋表面から深さ1 mmまでの薄層を「海洋表面マイクロ層」という。この薄層には、条件により糖、脂質、バクテリア、植物プランクトン、デトライタス等の濃度がそれ以深よりも高濃度で存在することが近年認識されるようになってきた。このような物質が海洋表面に存在した場合、海洋物質循環や大気-海洋間のガス交換速度等に対し大きな影響を与えるが、この薄層はサンプリングが困難なことから、日本国内における研究は殆どない。申請者は若手研究(平成30年度~令和2年度)において、春季親潮珪藻ブルーム期における海洋表面マイクロ層の調査を実施し、この薄層には直下の海水よりも植物プランクトン現存量や糖濃度などが高いことに加えて、植物プランクトン優占種が異なることを初めて明らかにした。しかしながら、海洋表面マイクロ層に特異的に生息する植物プランクトンの光合成能や糖生産については世界的にも良く分かっていない。本研究では、春季親潮珪藻ブルーム期の海洋表面マイクロ層の調査を行うとともに、海洋表面マイクロ層とその直下の海水に優占する植物プランクトンを単離し、室内培養実験にて光合成特性や糖と脂質の生産速度を明らかにする。 令和3年度は助成が決定した時点で、親潮域の調査航海の乗船者が決定していたため、航海には参加できなかった。しかしながら、高速液体クロマトグラフ(HPLC)の蛍光検出器を購入し、海水中の溶存態糖類組成を分析するための一連の準備を整えることができた。本HPLCによる培養実験試料の分解能は良好であり、11種の還元態糖類を分析することが可能となった。令和4年5月中旬には親潮域の調査航海に参加することが決まっているため、この航海で海洋表面マイクロ層とバケツ採水による海洋表面試料を採取し、マイクロ層に蓄積する糖類や脂質の濃度や組成などを明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、海水中の微量糖類の組成と濃度を測定できるよう高速液体クロマトグラフ(HPLC)の蛍光検出器を購入し、親潮域での調査航海や培養実験で得られる糖類試料を分析できるようにした。HPLCの分析では、11種の還元糖類のピークが検出することが可能となった。また、分析に関して、前処理法の改善(濃縮)を行うことで、これまで以上に低濃度の糖類試料を測定できるようになった。令和4年5月の親潮域調査航海で採取する試料を測定する準備を十分に整えた。
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Strategy for Future Research Activity |
令話4年度は5月11日~22日に行われる北海道区水産研究所の北光丸に乗船することが決定している。本航海において、海洋表面マイクロ層とバケツ採水で得られる海洋表面試料を取得し、マイクロ層に蓄積する糖類、脂質、植物プランクトン群集などについて調査を行う予定である。また、本航海では室内培養実験で使用する植物プランクトン株の採取も行う予定である。現場と室内での培養実験から、春季親潮珪藻ブルーム期における海洋表面マイクロ層への蓄積メカニズム等を考察する予定である。 令和5年度においても、同時期に予定されている親潮域の調査航海に参加し、海洋表面マイクロ層で増殖する植物プランクトンと紫外線の関係などについて調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
バクテリア計数のためにフィルターを注文していたが、年内に納期が間に合わなかったため。このフィルターは令和4年度において購入予定である。
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