2023 Fiscal Year Annual Research Report
春季親潮珪藻ブルーム期における海洋表面マイクロ層への物質蓄積メカニズムの把握
Project/Area Number |
21K17898
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
野坂 裕一 東海大学, 生物学部, 講師 (40803408)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 海洋表面マイクロ層 / 植物プランクトン / 透明細胞外重合体粒子 / 親潮域 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋表面から深さ1 mmまでの薄層を海洋表面マイクロ層(以降SML)という。この薄層は糖類、脂質、バクテリア、植物プランクトン、デトライタス等の濃度がそれ以深よりも高濃度で存在することが認識されている。このような物質が海洋表面に存在した場合、海洋だけでなく、海洋―大気間の物質循環にも大きな影響を及ぼすと考えられるが、SMLの知見は未だ限られている。そこで、本研究では釧路沖から三陸沖にかけて行われたA-line調査航海に参加し、SMLの蓄積物質並びに植物プランクトンとの関係などを調査した。最終年度にあたる令和5年度は、5月10日(水)から5月22日(火)にかけて実施された国立研究開発法人水産研究・教育機構 北海道区水産研究所の北光丸HK2305航海に乗船した。植物プランクトン現存量の指標となるクロロフィルa濃度はSMLと直下の水の間で大きな差はなかったが、糖類(透明細胞外重合体粒子、以降TEP)濃度はSMLの方が高く、特にA07観測点では7.8倍の増加となった。また、最終年度はHK2305航海で持ち帰った海水から単離した珪藻4種(Chaetoceros decipience, Thalassiosira nordendkioeldii, Stephanopyxis turris, Attheya sp.)を用いて、紫外線に対する増殖能とTEP生産力を評価した。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果として、SMLには植物プランクトンとTEPが蓄積し易いことが明らかとなった。特にTEPは蓄積量が多く、大気―海洋間の物質循環にとって重要な物質であることが示唆された。現場と培養実験の結果から、SML直下に生息する植物プランクトンはSMLに蓄積するTEPの生産者として重要な役割を担っていると考えられた。
|