2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K17903
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
田中 厚資 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環領域, 研究員 (10896327)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ナノプラスチック / 海洋プラスチック汚染 / 定量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
内部標準法をナノプラスチックの定量分析に導入するために必要な安定同位体ラベルしたナノプラスチック粒子の作製に取り組んだ。重水素化ポリプロピレンの合成を外部研究機関との共同研究により行った。手法としては、重水素化プロピレンをメタロセン触媒によって重合し、懸濁溶液をメタノール100 mL/濃塩酸5 mLの混合溶液に滴下し、白色の粘性のあるポリマーを得た。デカンテーションでポリマーのみを得た後、メタノールで3回洗浄して重水素化ポリプロピレンを得た。得られたポリマーについては、13C NMRスペクトルとDSC(示差走査熱量測定)でポリプロピレンが合成されたことを確認した。その後、これを原料としてナノプラスチック粒子作製を検討した。合成した重水素化ポリプロピレンをそのまま用いると、細かい不定形の粒子が形成されるなど不純物による影響が考えられた。そのため、塩酸等を用いた洗いを検討し、ナノプラスチック粒子が作製できる条件を確立した。加えて、市販の重水素化ポリエチレンについても、上記の洗浄方法を適用することで粒子作製が可能になることを明らかにした。 熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析装置(GC/MS)を用いたナノプラスチックの定量手法に関しては、キュリーポイント式と加熱炉方式の加熱による熱分解装置での比較、ナノプラ粒子の分析用試料の調整と分析条件の検討を行った。上記で作製した安定同位体ポリマー粒子の検出が可能であること、通常のポリマー粒子と安定同位体ラベルポリマー粒子とで、検出される同位体の違いによる区別が可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
定量分析に用いるための熱分解GC/MSの導入が遅れたため、機器分析の具体的な内容の検討については遅れがあるものの、ナノプラスチックの分析の信頼性を担保するための内部標準法の導入のための粒子作製が完了し、前処理等の検討に進んでいる。こうしたことから、全体としてはおおむね順調と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、標準粒子を用いた分析法の開発、前処理におけるナノプラスチックのポリマーの分画、夾雑物の分離方法の検討を行う。具体的には、劣化させたプラスチックに物理的作用を加えることで、環境中で存在する形状、正常に近いナノプラスチック粒子を作製し、これを用いて、分析方法の妥当性、内部標準法による補正を用いた上での定量性の確認を行う。その後、環境試料への適用までを目標とする。
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Causes of Carryover |
論文のアクセプトが見積もり時期より遅れたため、オープンアクセス料、投稿料の支払い分を繰り越した。
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