2021 Fiscal Year Research-status Report
分解性の高い防汚物質は環境に優しいと言えるか?感受性の高い水産重要種のリスク評価
Project/Area Number |
21K17904
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
河野 久美子 (池田久美子) 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 主幹研究員 (10371973)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 防汚物質 / 二枚貝幼生 / リスク評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、分解性が高いものの、二枚貝幼生への影響が懸念されている防汚物質(DCOIT)について、DCOITの分解性および二枚貝幼生の生態学的特性に基づき、より適切なリスク評価を行うことを目的として、今年度は以下の研究を行った。
・アサリ胚~幼生期の毒性試験法の確立:アサリはカキと異なり、切開法によって受精卵を得ることができない。そこで、成熟期のアサリを一晩馴致したのち、昇温刺激および精子添加により産卵誘発処理を行ったところ、毒性試験に必要な受精卵を得ることができた。そこで、American Society for Testing and Materialsの推奨する方法(ASTM E724 - 98(2012))に準拠し、得られた受精卵をDCOITを含む試験液の入った24穴マイクロプレートで48時間曝露したのち、D型幼生の奇形率をエンドポイントとする胚~幼生期毒性試験法を確立した。得られた研究成果の一部を令和4年度日本水産学会春季大会において口頭発表した。
・分布域および移動経路における汚染実態の解明:所属機関が所有する調査船を用い、広島湾におけるこれまでの浮遊幼生調査で得られた、カキおよびアサリ幼生の分布域や移動経路における汚染実態を調べた。海水試料は採水後、速やかに船上にて固相抽出カラムに付加し、試料中のDCOITをカラムへ吸着させ、安定化させた状態で研究室に持ち帰り、液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC/MS/MS)分析に供することで、調査海域の複数地点においてDCOITを検出することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カキと同様に防汚物質DCOITの影響が懸念されているアサリについて、昇温刺激および精子添加による産卵誘発処理を行い、得られた受精卵を用いてリスク評価に必要な胚~幼生期の毒性試験法を確立し、成果の一部を学会で口頭発表することができた。また、海水試料を採水後、速やかに船上にて固相抽出カラムに付加し、試料中のDCOITをカラムへ吸着させ、安定化させた状態で、液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC/MS/MS)分析に供することにより、広島湾におけるこれまでの浮遊幼生調査で得られた、カキおよびアサリ幼生の分布域や移動経路における複数地点においてDCOITを検出することができた。以上より、当初の目的を達成することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、分解性が高いものの、二枚貝幼生への影響が懸念されている防汚物質(DCOIT)について、DCOITの分解性および二枚貝幼生の生態学的特性に基づき、より適切なリスク評価を行うことを目的として、次年度は以下の研究を行う。
・分布域および移動経路における汚染実態の解明:今年度に引き続き、所属機関が所有する調査船を用い、広島湾におけるこれまでの浮遊幼生調査で得られた、カキおよびアサリ幼生の分布域や移動経路における汚染実態を調べ、経年変化を明らかにする。
・胚~幼生期における影響の把握:今年度に確立した方法で毒性試験を行う。試験水中のDCOIT濃度を液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC/MS/MS)で測定し、試験期間中の濃度変化を把握する。試験終了時に幼生を固定し、顕微鏡観察により幼生の奇形率を求め、実測濃度に基づいたDCOITの毒性値を算出する。分解産物の影響も把握するため、入手可能なDCOIT分解産物について、アサリおよびカキ受精卵を用いた胚~幼生期の毒性試験を行い、実測濃度に基づいたDCOIT分解産物の毒性値を算出する。
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Causes of Carryover |
今年度は作業の効率化等により、人件費を使用しなかったために当該助成金が生じた。次年度は当該助成金を作業の効率化に必要な物品の購入に使用し、翌年度分として請求した助成金は当初の予定通り使用予定。
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