2022 Fiscal Year Annual Research Report
メタン発酵の有機物負荷変動に対する微生物の応答ならびに適応力の解明
Project/Area Number |
21K17906
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小山 光彦 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (50794038)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | メタン発酵 / 有機物負荷ショック / 微生物叢 / レジリエンス / 微生物ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、有機物負荷ショックに強いメタン発酵システムを開発することを目指して、繰り返される有機物負荷ショックに対するメタン発酵微生物叢の応答と適応を解明することを目的とした。 初めに、有機物負荷ショックに対する微生物叢の短期的な応答が、種菌に使用する馴化基質の複雑さによってどのように変化するかを、回分メタン発酵装置を用いて評価した。単純な基質に馴化した種菌では、有機物負荷量の増加とともに微生物多様性が低下し、それに伴いメタン収量も減少した。一方、複雑な基質に馴化した種菌では、有機物負荷が高くても微生物の多様性は安定であり、メタン収量への影響も小さいことから、有機物負荷ショックに対するレジリエンスが高まることが明らかとなった。 次に、複雑な基質に馴化した微生物叢を種菌に用いて半連続メタン発酵実験をおこない、異なる頻度で繰り返される高有機物負荷ショックに対するメタン生成能、微生物叢の遷移、ならびに微生物ネットワーク構造の変化について解析した。その結果、有機物負荷ショックの頻度が低いほど、メタン発酵の安定を維持するために必要な微生物ネットワーク構造が崩壊し、最終的にメタン生産性が損なわれることを明らかにした。さらに、メタン収量が減少した一方で中間代謝物である有機酸は蓄積しなかったことから、微生物叢の活動がメタン生成に寄与しない他の代謝物の生産にシフトしていることが示唆された。 そこで、複雑な基質による馴化に加えて、より高い有機物負荷に馴化させた種菌を接種したところ、有機物負荷ショックを繰り返してもメタン生産性が維持され、微生物ネットワークも安定であることを明らかにした。これらの一連の結果から、複雑な基質と高有機物負荷条件を用いてメタン発酵の微生物叢を馴化させることで、有機物負荷ショックに対して非常に堅牢性の高いメタン発酵システムを構築することができると結論づけられた。
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