2022 Fiscal Year Annual Research Report
Developing a global ecological model and its application to biodiversity conservation
Project/Area Number |
21K17913
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高科 直 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (30855242)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 生態系 / 絶滅 / 保全 / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き,グローバルスケールにおける生態系パターンを記述する数理モデルと土地利用動態(Land-use dynamics)を記述する数理モデルを組み合わせ,土地改変に伴い地球規模で生じる生物種絶滅の定性的パターンを明らかにする研究を行った。 数値計算により,様々な生態系の構造および土地利用のシナリオごとに絶滅リスクを評価した。絶滅リスクを土地改変による生息地の完全な消滅という指標で評価した場合(Endemics-area relationshipの一般化による評価),同等の新規土地利用面積の増分という条件にも関わらず,既に失われた生息地が大きいほど,ある一定の土地利用面積の増加に伴い予測される絶滅種数が増加するという結果が多くの土地利用シナリオのもとで示された。加えて,生態系保全のために保護区を導入した際,上記の定性的な絶滅リスクのパターンに対する影響を調べた。保護区の効果は予め予想された通り,絶滅リスクを効果的に減少されることを示し,更に導入のタイミングが早いほど,その絶滅リスク減少に対する効果が大きくなることが示された。 一方で,一般に生態学で用いられる生息地の消失に関連づけられる「絶滅」の定義は一意ではなく,適用する定義を変えると定性的に異なる絶滅パターンが示されることも示した。しかし上述の「生息地の完全な消滅」以外の絶滅の定義(例:生息地が9割消滅すると絶滅と定義する)を用いると,絶滅が起こるまでに時差が生じるいわゆる「絶滅の負債」が起こり,絶滅のタイミングに関する時間軸上の不確実性が発生する。本研究の結果は改めて,絶滅の定義やそれが使われる文脈の明確化の必要性,また環境保全政策の不確実性を減少させるため「絶滅の負債」のより詳細な理解の重要性を示唆する。 得られた結果は論文としてまとめ,現在投稿中である。
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