2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K17915
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
渡部 俊太郎 鹿児島大学, 理工学域理学系, 助教 (00782335)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フェノロジー / 花色 / 群集集合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請では、植物における異種間の送粉(HPT)が同時開花する植物の花形質のバラツキにどのように影響するのかを解明することを目指した。HPTは雑種形成や繁殖干渉を通じて繁殖成功に負の影響を及ぼすため、これが同時開花する植物の花形質の集合則にも影響すると予想されてきた。しかし、現状は①異種花粉の付着(HPT)を回避するため花の形質は大きくバラついた組み合わせ(過分散)になる、②送粉者を誘引するため花形質はよく似た組み合わせ(収斂)になる、という対照的な報告が存在している。本研究では、特に木本と草本の生活史戦略の相違に焦点を当てて両者の花形質や共存パターンを比較し、研究を進める計画を立てた。一年目は、①野外における植物の花フェノロジーの観察 ②花色・花形質の定量 ③既存の植生調査データを利用した植物の近縁種の共存パターンの解析を実施した。①については、当初予定していた調査地が伐採対象地域になった都合から、調査地を変更する必要に迫られたが、別の調査地を探し予定通りの調査を行えた。②についても概ね予定通りの調査を実施できた。野外での花色の定量は機材の納入の時期の都合から行えなかったが、色見本を利用して代替の調査を行った。③については既存の植生データのデジタル化を、計画段階で予定していた範囲まで実施することができた。 今年度の調査から①木本植物は草本にくらべて狭い範囲での近縁種の共存が頻繁に見られる ②木本植物は草本に比べて色や形のよく似た花が短い期間の中で集中して咲く傾向が見られる 、という2つの傾向を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植生データの整備と野外でのデータ収集を概ね順調に行うことができた。ただし、野外での花色の定量は機材の都合から次年度に持ち越しとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、野外での花色データと訪花昆虫のデータを取得することが主な目標となる。訪花昆虫については今年度も予備的に調査を実施したが、特に木本植物でデータ数が不十分になる課題が明らかになった。このため次年度は木本植物を重点的に調査する。また、整備した植生データの詳細な解析にも着手する予定である。
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Causes of Carryover |
スペクトル分析用の光源を追加購入する必要が出たことから物品費が予定額を上回ったが、現地調査の旅費は大学の公用車を使える目処が立ったことから当初の予定よりも使用額が少なくなった。また人件費についても当初の予定よりも早く作業が完了したため少なくなった。今年度に続き次年度も野外調査を継続する必要が生じたため、次年度使用額は主に野外調査の費用に充当する。
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