2022 Fiscal Year Research-status Report
Disease risk and biodiversity: examination of dilution effect hypothesis by urbanization gradient
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21K17917
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小峰 浩隆 山形大学, 農学部, 助教 (60870889)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 新興感染症 / マダニ媒介感染症 / マダニ / 生物多様性 / 希釈効果 / 都市化 / 島 / 野生動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、世界のいたるところで野生動物に由来する新興感染症が発生している。社会に新興感染症が広まった場合、人の命や健康が脅かされ、経済や文化、教育や安全保障など、人間社会の基盤に大きな影響を与える。そのため、新興感染症の感染リスクが発生するメカニズムを解明する事は学術的にも社会的にも非常に重要な課題である。本研究の目的は、生物多様性が高ければ感染リスクが低減するという希釈効果仮説の検証を通して、感染リスク-生物多様性関係を解明する事である。新興感染症として、マダニが媒介する感染症を対象にする。2年目である当該年度では、1年目に引き続き感染リスクとしてマダニ類の生息密度、生物多様性としてマダニ類の宿主である野生動物各種の生息状況の調査を実施した。当初の研究計画では、研究代表者が所属していた森林総合研究所が位置する関東地方において調査を実施する計画であった。しかし、研究代表者の山形大学への異動に伴い、1年目に調査地を山形県周辺に変更した。山形県の都市や森林などの様々な環境に設定した15か所の調査地において、旗ずり法(120*70cmの白布による採集法)を用いてマダニ類の生息状況及び相対密度の調査を行った。加えて、離島である飛島においてもマダニ類の生息状況等の調査を行った。その結果、山形県本土と飛島でのマダニ類の種構成が大きく異なる事が明らかになった。また、これまで北日本で確認された事のない南方系の種を改めて確認し、さらに、大型獣を主な宿主とする種の存在も確認した。本結果の一部について現在国際誌にて査読を受けている。また、自動撮影カメラを用いた野生動物相の調査を山形県本土及び飛島において実施した。その結果、山形県本土と飛島での野生動物の種構成の相違を確認した。今後、山形県本土及び飛島において、引き続きマダニ類及び野生動物相の生息状況の調査を実施し、希釈効果仮説の検証を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題申請時の研究計画では、研究代表者が所属していた森林総合研究所が位置する関東地方周辺を主な調査地とする予定であった。しかし、研究代表者の山形大学への異動を踏まえ、1年目に山形県周辺を主な調査地とする事に変更した。東北地方では、現在西日本を中心に問題となっている重症熱性血小板症候群(SFTS)や日本紅斑熱等のマダニ媒介感染症の感染者がほとんど報告されていない。そのため当初計画していた、実際に感染者が発生している地域において野外調査を実施する事が難しくなった。しかし、複数のマダニ類及び野生動物が東北地方に生息しており、南方系のマダニ類の分布拡大も懸念されている。そのため、感染リスクと生物多様性との関係を希釈効果仮説の検証を通して明らかにするという研究目的は、東北地方においても達成可能であると判断し、新たな調査地を設定した上で調査を開始した。2年目である当該年度は、1年目に引き続きマダニ類及び野生動物各種の生息状況の調査を行った。また、野生動物の種構成が異なる事が想定される離島である飛島を新たな調査地として加え調査を実施した。その結果、これまで北日本では発見された事のなかった南方系のマダニ類複数種の存在を改めて確認した上、大型獣を宿主として選好する事が知られている種の生息も確認した。これは、主に南方におけるマダニ媒介感染症の媒介種が北日本にも進出しつつあり、大型獣が少ない状況下でも様々なマダニ種が確認され得る事を示唆する成果である。本成果の一部は既に国際誌に投稿済であり、現在査読を受けている。以上の事から、当初の研究計画からの変更があったものの、1年目に引き続き成果があがっている。そのため、おおむね順調に進んでいるという評価が適切であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の遂行には、環境の異なる多地点において、マダニ類及び野生動物相の生息状況や相対密度を明らかにするための野外調査が必要である。そのため、調査地は所属機関周辺である事が望まれる。当初所属していた森林総合研究所から山形大学への所属の変更に伴い、当初の研究計画で予定していた、都市化傾度の異なる複数地域における野生動物相調査が難しくなった。そのため、1年目及び2年目において、調査地を山形県に改めて設定し、環境の異なる調査地として離島である飛島を調査地に加え、マダニ類及び野生動物相の調査を行った。今後は山形県本土及び飛島の各調査地において、マダニ類の季節消長及び相対密度に関して年間を通したデータを蓄積していく。併せて野生動物各種の生息状況や相対密度を継続して調査を実施していく。また、これまでの調査結果から、マダニ類の種組成は必ずしも哺乳類に依存するのみではない事が明らかになりつつある事から、鳥類等のより幅広い分類群の組成も考慮する事を計画している。得られた成果は逐次学会や論文として発表、発信していく。
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