2022 Fiscal Year Research-status Report
自動車軽量化に伴う新構造材料の動的循環解析及びリビルト導入効果の検証
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21K17918
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
張 政陽 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (40875465)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アルミニウム / 固体電解精製技術 / リサイクル / アップグレード / 電気自動車 / 省エネルギー / 展伸材 / 鋳造材 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は材料科学研究チームと共同で固体アルミニウム(Al)溶融塩電解技術を開発し、Al新地金製造時の半分以下のエネルギー消費で銅、硅素等の合金化元素を大量に含むAlスクラップを純Alに再生することを実現した。また、電気自動車へのシフトによる脱エンジン化に伴うAl需要の変化に着目し、本技術を適用した場合、世界のAl資源循環への波及効果を明示した。この成果は、2022年4月14日に世界トップの総合科学誌Natureに掲載された。 現在の再溶融プロセスによるリサイクルは、合金元素の除去が困難で品質劣化を伴うダウングレードリサイクルとなっている。そのため、再生Alの最終用途は、自動車用エンジンブロック鋳造品などに限られている。しかし、世界的な電気自動車の普及によりエンジンの需要が激減し、再生Alの受け皿の縮小につれ、世界のAlの循環破綻が懸念されている。このままでは、2040年に使えない再生Alが364万トンに上ると推計した。この「Alクライシス」の克服に資する本技術の実証実験として、硅素を11%、銅を2%、鉄を0.8%含有するAl合金を固体のまま陽極として電解した結果、陰極において純度99.9%のAlを96%の収率で回収できた。また、本技術によるAl再生にかかるエネルギー消費は58~80MJ/(kg-Al) であると見込まれた。更には本技術を既存のAlリサイクルシステムに導入した場合、2040年に364万トンの再生Alを高純度Alに戻すことができ、多様なAl需要へ対応できる。 本技術は、Alのサステイナブルリサイクルの実現に貢献できると考えている。本技術によって全てのAlスクラップを精製する必要はなく、Al再生時に質の低下を防ぎ、展伸材に再利用できる最低限の処理量を確保することが経済的及び省エネルギー観点から合理的である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
自動車の軽量化素材として代表格のアルミニウム(Al)合金は、本研究において最も重要な対象素材である。そこで、代表者はガソリン自動車、ディーゼル自動車、ハイブリッド自動車、及び電気自動車におけるAlの組成変化や世界的な電気自動車シフト、新たなリサイクル技術の導入によって引き起こしたAlの循環構造の変化を解明したことは、研究計画通りに一部の成果を引き出した。このほか、中国の清華大学や北京科学技術大学の関連分野で本研究成果を含む知見を発信しつつ、新たなネットワークの構築に取り組んでいることは高度な資源循環に関わる研究及び政策決定を支援する上で価値があり、予期していなかった成果が得られた。 一方、代表者は社会科学研究に留まらず、Alの持続可能な利用の制約要因のとなっている現行のダウングレードリサイクルという課題に向けて、東北大学工学研究科の材料科学専門家である長坂徹也教授らの研究チームと積極的に連携し、不純物元素が混在するAlスクラップから高純度Alに再生する新たなリサイクルプロセスの開発に成功したことは、期待以上の成果を達したと考えている。さらに、本技術に関して材料科学及び社会科学の多様な視点から評価を行い、多分野融合による共同研究成果をNature誌に掲載されたことは、若手研究の新たな道標になれると考えています。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度には、電気バスの徹底解体を行い、アルミニウムやマグネシウムなどの組成成分を調査するとともに、データベースの精緻化を行う。また、バッテリーのリユースとリマニュファクチャリングのポテンシャル、工業プロセスにおける各種パラメータを調査し、データベースに反映する。次に、対象部材の資源循環解析に向けて評価モデルの拡張ならびにデータベースへの接続を行う。最後に、分析を行った上で、研究成果の学会発表と論文化を予定している。
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Causes of Carryover |
理由は、昨年度に予定していた使用済み電気自動車の解体や素材構成、部材の組成成分調査を委託できる事業者が見つからず、助成金を本実験に使うことができなかったからです。2023年度には、繰越金を含めた助成金を使用済み電気自動車の部品単位での解体、重量測定、外観評価、組成分析のためのサンプル採取、組成調査、データベース作成に使う予定です。本実験は4月下旬から8月までの間にわたり、自動車解体業者での解体、専門業者での金属組成成分分析、データベース作成という順で行われる計画です。
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