2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K17931
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Research Institution | Kanazawa Gakuin University |
Principal Investigator |
加藤 里紗 金沢学院大学, 経済学部, 講師 (30830070)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | エネルギー貧困 / 気候変動 / エネルギー政策 / SDGs |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本の夏季エネルギー貧困の測定方法の考案と実態把握,エネルギー貧困に陥る要因の分析を目的としている。令和5年度は前年度に行ったアンケート調査の結果をもとに論文を執筆した。このアンケートは北日本に在住の男女500名(20-70代)の冬季のエネルギー貧困の状況,住環境,省エネ行動の有無,家の欠陥の有無などを調査したものである。論文「北海道・東北地方におけるアンケート調査からみる日本のエネルギー貧困」では所得におけるエネルギー費用の占める割合といった従来から定義されている経済的なエネルギー貧困とともに,「室温を快適に保つことができない」という意味での主観的なエネルギー貧困に焦点をあて,主観的なエネルギー貧困に「省エネ」行動が影響を与えているのか検討した。その結果,日本のエネルギー貧困はヨーロッパと比べても深刻な状況にあること,特にエネルギー費用の負担が重いうえに室内を快適に保てない層が42.4%にのぼることが明らかになった。支出から見たエネルギー貧困の場合,特に世帯所得が影響しており,低所得者はエネルギー負担が重く,高所得者は低い傾向が見られた。 さらにエネルギー貧困に「省エネ」がどのように関わっているのかについて検討した結果,暖房を我慢することによって室内の温度が不快になるため,この手法で「省エネ」を行うことで主観的なエネルギー貧困の状況を悪化させる恐れがある点,積極的な省エネ手段を講じることでエネルギー貧困に陥るのを防ぐ効果が期待できる点,さらに家の欠陥がない状態にしておくことがエネルギー貧困の予防のために重要である点が明らかになった。令和6年度は夏季エネルギー貧困の実態を明らかにするために,より広範な地域でアンケート調査を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和5年度には沖縄県での本調査(調査対象の選定,調査協力者とのミーティングなどを含む)を予定していたが,8月に沖縄県を台風が襲い,停電した地域が多かったことから調査を行うのに適さないと判断し,次年度に延期することとした。またインターネット調査を行うための準備を進めていたが,沖縄県のみでは被験者数が集まらないなどの問題があり,調査対象地域を広げることを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は夏季エネルギー貧困に関する本調査を行う。調査はインターネットを用いたアンケート調査およびインタビュー調査を検討している。調査内容は令和5年度に行った調査結果をもとに項目を精査する予定であるが,主に電気料金の値上げによる経済的・主観的エネルギー貧困の実感について,「省エネ行動」の有無について取り上げる。調査対象地域は従来は沖縄県を想定していたが,被験者が十分に集まらない懸念があるため,関東など他地域に変更または拡大する。また同年度においてその結果を論文にまとめるとともに,学会発表や国際研究会で報告を行う予定である。
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Causes of Carryover |
令和5年度に予定していた沖縄県でのアンケート調査を延期したために旅費・人件費等が未使用であったため次年度使用額が生じた。令和6年度では延期したアンケート調査を行うとともに,国際研究会に参加するための旅費として使用する予定である。
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