2021 Fiscal Year Research-status Report
原発避難者と地域の融和に向けた介入方法:コミュニティ形成モデルの開発
Project/Area Number |
21K17943
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
小林 智之 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (60835487)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 集団間葛藤 / 社会的アイデンティティ / コミュニティレジリエンス / リスクコミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、原発事故避難者と地元住民との間で発生した集団間葛藤について検討し、避難者と地域の融和に向けたコミュニティ形成モデルを開発することを目的としている。東日本大震災と福島台地原発事故の後、福島県いわき市には、原発事故の避難者を受け入れるための復興公営住宅が設置され、浪江町や双葉町といった相双地区からの避難者が多く住んでいる。避難者の支援には、避難先で孤立しないコミュニティ形成が求められるが、いわき市では、地域特有の習慣の違いや原発事故に関わる賠償金の支払い等の違いによって避難者と地元住民との間にコンフリクトが発声しており、対人トラブルが相次ぐなど、避難者を包括したコミュニティ形成は思うように進んでいない。そこで、本研究では、社会生態学的アプローチと実験社会心理学的アプローチからコミュニティ形成についてモデル化し、原発事故避難者が地域に参加するための介入方法の開発を行う。 本年度では、調査や実験の実施の前に、既存の知見やデータを用いてまとめることを試みた。具体的には、コミュニティレジリエンスやコミュニティ内のリスクコミュニケーションの過程についてまとめた。まず、災害後に崩壊したコミュニティにおいて別地域から避難してきた人々を巻き込んだレジリエンス過程について議論した。異なる社会的アイデンティティを持つ集団同士(いわき市と相双地区)の共同を促すうえでは、上位の社会的アイデンティティ(福島県)または両方の集団の相互依存性に焦点化を促すことが重要であると議論された。また、避難者も含め、人々が日常生活を送るのに必要な知識の形成やリスク信念の形成では、専門家の情報提供よりもコミュニティ内のコミュニケーションが重要な働きを持つことを確認した。それぞれElsevier社から出版された書籍と国際学術雑誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、別の地域から移ってきた避難者を交えた地域コミュニティ形成において調査・実験を通してモデルを構築することを計画している。現在、調査と実験に入る前に改めて先行研究や既存データの整理を行っている。本研究の進展に問題はないが、初年度に計画していた調査が実施できていないという点でやや遅れていると評価した。ただし、いわき市内の復興公営住宅の自治会長らとの相談は進んでおり、研究3で計画している介入の準備は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、コミュニティ形成モデルに関する社会性多額的アプローチとして、2022年8月までに調査票を作成し、10月に調査を実施する。その後、12月までに実験デザインの整備、3月までに実施を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度計画していた調査が次年度に持ち越されたため。
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