2021 Fiscal Year Research-status Report
Tacit Knowledge of Persons with Disabilities and Value Chain in Agriculture, Forestry and Fisheries in Southeast Asia
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21K17945
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
佐野 竜平 法政大学, 現代福祉学部, 准教授 (90805342)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 障害者の暗黙知 / 農福連携 / 障害と開発 / ビジネスと人権 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年間で行う本研究の初年度として、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の人口70%以上を占めるインドネシア・フィリピン・ベトナムの3カ国を対象に、農林水産業に従事する障害者の暗黙知の特定を念頭に置いた研究活動を行った。 まず、「農福連携」「循環型経済」「ビジネスと人権」など本研究関連の切り口を整理し、斬新性という点で比較可能な研究デザインの構築を心がけた。その上で、研究構想時からコミュニケーションを取っているインドネシア・フィリピン・ベトナムの研究協力者と意見交換を重ね、今後の研究プロセスを確認した。 ついで、農林水産業に従事する障害者の暗黙知について、現地の研究協力者と密に連携し、創意工夫があると推測される事例についてリスト化を行った。特にフィリピンについては、コロナ禍にありながら初年度中に現地へ渡航した。フィリピン政府の全国障害者問題評議会の局長や障害担当官に接触するなど、今回の研究に関連した法施策に関する情報を得ることができた。 さらには、インドネシア・フィリピン・ベトナムを含む東南アジアの障害者が持つユニークな暗黙知について、これまでインタビューしたことのある事例を中心にフォローアップを行った。その一部については、インドネシアの査読論文や日本の主要な障害者団体が主催する研究会で発表した。同時に記事掲載の依頼を受け、研究内容の一部を発信することができた。このように、限られた対象国・事例ではあるが、2年目以降の研究の土台を構築することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本調査の目的を達成するため、研究計画に沿って研究協力者とコミュニケーションしながら作業を進めている。本研究の課題については、進捗状況に濃淡はあるが着実に成果が得られている。以下に主な成果の概要を示す。 (1) コロナ禍で対面によるやり取りが難しい事情の中で研究実務を進めるため、現地で英語を通じてコミュニケーションできる研究協力者を選定した。特に各国の農林水産業に通じた障害当事者でもあるキーパーソンと連絡を取り、協力を取り付けることができた。研究対象国の1つであるフィリピンには、実際に渡航して対面にて意見交換することができた。その後も研究対象となりうる事例のリスト化を行い、関連情報を整理してまとめた。こうした積み重ねをベースに、東南アジアの研究対象国と日本の違いを視野に入れた調査票を作成した。 (2) 農福連携の実践に造形の深い専門家が集う全国社会就労センター協議会のワーキンググループにその一員として参加し、日本およびアジアにおける様々な分野と連携する現場の創意工夫を浮き彫りにする調査実務を行った。研究者は特にアジアの事例を担当することになり、齟齬がないよう現地の実践者をインタビューし、取りまとめることができた。 (3) 障害者の就労に関連した本研究の一部が、インドネシアの大学が発行する雑誌の査読論文として掲載された。また、日本の主要な障害者団体による研究会に招待され、研究者や業界関係者の前で同研究の一部を発表した。本研究の深まりに関係するフィードバックを他の研究者や業界関係者からもらい、本研究で達成しうる内容の範囲を確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究対象国の障害者法制度や関連施策に留意しつつ、域内の比較研究であることを念頭に、各関係者へのインタビュー調査を継続する。特に、2年目は以下を研究の推進方策として考えている。 (1) 障害者の就労支援を行う団体が分野を超えた連携をどのように行っているか、参考となる海外事例をできるかぎり抽出する。それを様々な媒体を通じて発表しつつ知見を蓄積し、理解を広げることを試みる。例えば、農福連携に関係する研究対象国の事例について、全国社会就労センター協議会の加盟団体など関係者を対象にした研究報告書に盛り込むことを計画している。 (2) コロナ禍であることを十分に留意しつつ、インドネシアやベトナムなどの研究対象国、または障害関係者が集う国際機関の本部があるタイへ渡航を行う。現地でインタビュー等研究実務を進めた上で、研究の一部を現地大学での研究会等でフィードバックし、知見の積み上げを行う。 (3) 本研究の対象である障害者は、新型コロナの影響を大きく受けている。そこで、農林水産業に従事する障害者を中心に、コロナ禍で困ったことやあってよかったこと、あるとよかったことなどを聞き取り、暗黙知の応用に必要な環境の特定にも留意していく。
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Causes of Carryover |
海外渡航を含む研究計画を立てていたところ、コロナ禍で渡航困難となっていた。そこでオンラインながら研究を進められることを優先させ、海外渡航を2年目以降にすることとした。幸いにも別途関連の活動で対象国の1つを初年度に訪問することができたが、その際には科研費以外の財源を確保できたため、使用しなかった。2年目には、1年目でコロナ禍の制約を受けた分について、研究活動のプロセスを前倒しする予定となっている。
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Research Products
(17 results)