2021 Fiscal Year Research-status Report
Research and study on the solution of social problems through the protection and utilization of cultural properties in cooperation with local resident
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21K17946
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
清水 玲子 武蔵野大学, 環境研究所, 客員研究員 (10869217)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 持続可能 / 地域 / 少子高齢化 / 文化 / 伝統 / 持続可能 / 暮らし / 文化財 |
Outline of Annual Research Achievements |
COVID-19感染拡大により、天川村でのフィールド調査ができない状態が続いたため、その土台となる文献調査を進めるとともに、オンラインでのインタビュー調査、および、本件に関わる研究会を実施した。 天川村の文化財に関する公開データである、文化庁の国指定文化等データベース、奈良県の県指定文化財一覧、天川村の文化財指定情報に関して、指定文化財名やデータの項目等に差異がある等、アーカイブとしては不十分な状態にあることから、データの補足調査を進めた。村発行の『天川史』も含め、これらには無形文化財に関する情報が集約されていないことが課題として確認された。 研究会では、文化財を用いた地方創生について、先行事例に関する情報共有や意見交換などを行った。本研究の計画段階では文化財が村の活性化に寄与する可能性を探ろうとしていたが、研究会を通して財ではなく文化こそが地域コミュニティには必要不可欠ではないかと考えるに至った。村民が一体となって伝承していく行為こそが、地域の持続可能性に資する。村に伝わる行事等の無形文化財に関する調査が喫緊の課題であると考え、村内のキーパーソンへのインタビュー調査を開始した。 インタビュー調査では、高等学校への進学を機に村から子どもが出て行ってしまう構造的な問題に加え、表には出せない様々な問題が、将来にわたり負の要因として横たわっていることが確認された。また、代替わりが進み、暮らしに欠かせなかった共同体の維持に関しても問題は山積している。しかしながら、観光客は増加し、一見すると村は賑わっているため、すぐさま問題を解決しなければならないという意識は一部に留まっている。なお、天川村立小中学校との協働を目指し、オンラインでのワークショップの開催を天川村教育委員会に働きかけたり、高齢者へのインタビュー調査の実施を模索したりしたが、いずれも実現できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最初の計画では、1年目は村民との関係を築くために天川村に複数回入る予定であったが、COVID-19 感染拡大の影響のため一度も訪問することができなかった。その上、調査を進められないことで、調査結果の発表を見送るしかなかった。 本研究の協力者である天川村研究所と相談して、いくつかの行事の取材の承諾をもらったものの行事自体が中止になってしまうなど、本研究の核となるフィールド調査が実施できなかったことは、本研究の進捗が遅れた最大の要因である。また、高齢者へのインタビューをオンラインで実施できないかについても模索したが、そのための関係の構築ができない状況にあり、また、機器の扱いの問題等もあり、実現できなかった。その中で、オンラインによる研究会やインタビュー調査、天川村教育委員会に対する働きかけ等の準備、及び文献等の文字資料による補足調査などを行い、2年目の調査研究を円滑に実施するために怠りなく準備を進めてきた。 また、本研究においては、子どもたちとの協働も重要な要素であったが、天川村教育委員会に働きかけをおこなったところ、COVID-19により学校の負担は増加しており、その上、10年ぶりにへき地校の大会実施校に指定されたため、これ以上の活動を増やすことは厳しい状況にあることが確認された。しかしながら、何かしら実施できないかについて協議を続けていくことになっている。当初の計画とは異なる形になる可能性もあるが、2年目以降も続けていく。 COVID-19 が完全に収束したものではないため、計画については変更する必要があるが、その目的である文化財の保護と活用により、天川村が抱えている課題の解決を目指し、状況に応じて方法を修正しながら調査研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19 感染拡大の影響により、当初の計画を修正せざるを得ない。高齢者へのインタビュー調査は、COVID-19 がほぼ収束を見るまでは協力を得ることは難しい状況にある。また、天川村立小中学校との協働については、天川村教育委員会と協議をした結果、COVID-19 により学校の負担は拡大しており、新たな活動に取組む余裕がないとのことで、今後も協議を続けることになった。 文化による地方創生にはいくつかの方向性があるが、①文化財を観光に活用、②シンボリックな文化財を通して住民のつながりを醸成、③住民協働により文化の維持、コミュニティの関係性を深化、の3つに大きく分け、当初の計画では②の可能性を探る予定であったが、②のみではなく③も併せなければ持続可能ではないことに気づいた。そこで、実行が難しい当初の計画の一部を差し替える形でこの点を充足していく。関連する団体や個人に対してフィールド調査を拡充する。さらに、天川村でのフィールド調査の進捗状況に応じて、関連する知見を得るために、地域における調査研究を進めている研究者へのインタビュー調査を実施する予定である。 天川村では急速な人口減少にCOVID-19 という更なる負の要因が加わったことにより、文化財を取り巻く環境は一段と厳しくなっている。とりわけ、無形文化財の記録と伝承が急務であることが、1年目に確認された為、有形文化財の調査だけでなく、無形文化財、とりわけ村内だけで伝えられている行事等、を優先的に取材し情報蒐集を進める。また、村の中心的な存在である天河大弁財天の行事も切り離すことはできない。これらの行事がCOVID-19の影響により3年間連続で中止となったものもあり、もとより継続も覚束ない状況であったことから、今後、すべてが復活するかは不透明な状況にある。可能な限り情報を収集し、子供たちの学びに資する資料として集約したい。
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Causes of Carryover |
オンラインで可能な調査を進めるためにその環境整備は行ったが、フィールド調査のための旅費、及びそれに伴う謝礼や調査補助に関する人件費の支出ができなかったことで、予算の一部の執行が次年度にずれ込んでしまった。 COVID-19の感染状況をみつつ、2年目はフィールド調査を可能な限り実施する予定であり、残りの期間で繰り越し分の執行も可能と考えている。フィールド調査の際には、アシスタントの同伴も考えていることから、人件費の支出も実施する予定である。ただし、COVID-19感染拡大前と同じ手法に戻すのではなく、オンラインとフィールド調査を組み合わせる形で対面の頻度を減らしつつ、フィールド調査の回数を増加させる。事例調査先について、当初の計画も含め見直しを行い、COVID-19 により天川村での活動を縮小せざるを得ない部分について、先行事例との比較調査により補足していきたいと考えている。具体的には、下記について、調整を行っている。 ①と②:伝統的漆かきを復活させた奈良県曽爾村/桜による町おこしの吉野郡吉野町/日本の伝統文化に欠かせない麻の復活を試行する三重県伊勢市 など ③:美術館×観光で成功例とみなされている淡路島 など また、2年目は学会発表や先行する研究者へのインタビュー調査も併せて実施する予定である。
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