2021 Fiscal Year Research-status Report
ツールとしてのナショナリズム:フィリピン人移民によるアイデンティティ構築の過程
Project/Area Number |
21K17960
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
白石 奈津子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 講師 (90875460)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | フィリピン / ナショナリズム / 移動 / マイノリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルスに関連する渡航制限が収束せず、当初計画していた研究者招聘を含む研究会開催を実行することができなかった。その代替として、現状で進められる以下の3点を中心に幾つかの研究準備を進めた。 本研究の目的は移民排出国家フィリピンを事例とした帰属欲求とナショナリズムの物語の再考にあるが、議論を多角的に検討するために、まず、近年のフィリピンにおける新自由主義的で市場適合的な主体性の拡大を議論する若手自主研究会に参加し、報告等を行った(研究会はその後、本研究とは異なる共同研究プロジェクトとして継続中)。議論を通し、本研究にも通底する「移動する人々による共同体規範の再編と部分的強化」という現象が、他の若手研究者が行っているフィリピンの様々な地域での研究事例にも共通して観察されることが明らかとなった。こうした論点を、移動に関連する主体の在り方と国家、不安定性と帰属への欲求という本研究の議論に組み込むためにデータの整理を進めている。 次に、ディアスポラ的経験とその発信という部分に関しては、焦点をミレニアル世代にとっての経験に絞り、ロンドン在住のフィリピン人コラムニストによるエッセイを一種のマイナー文学として捉えた分析を進めている。著者が配信するテキストにおいて、空間や他者の描写がどのようなメッセージとして描き出されているのか、著者が想像する「受取り手」との応答をめぐる議論として考察を進めている。 最後に、上述の検討データを基盤にしながら、ロンドン在住フィリピン人の経験事例を「ミレニアル世代ディアスポラのナショナリズムと情報発信」という形で改めて焦点化し、関連テーマを研究する若手研究者との間での共同研究会の準備を進めた。既に数名の研究者に研究報告やコメンテーターとしての参加を交渉済みで、本年度中の研究会およびワークショップという形態での実施を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスの流行に伴う渡航制限が解除されず、当初計画していた海外調査や研究者招聘を含む研究会の開催を予定通りに進めることができなかった。その代替として、現状入手可能な資料等を用いて令和4年度中の研究成果公表などのための議論と研究作業を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
現地での参与観察調査や、海外研究者とのコラボレーションとしてのワークショップを実施するための予備的な打ち合わせを進めているので、それを実施に移す予定である。引き続き双方の渡航が困難な状況が続く場合は、オンラインツールを用いた調査成果のみで研究成果をまとめ、学会発表、論文などの形で公表するように努める。
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Causes of Carryover |
研究会およびワークショップのための招聘費用および海外調査費として計上していたものの、新型コロナウイルスの流行に伴う渡航制限の継続によりかなわなかったため。本年度は既に渡航制限が緩和されているため、昨年度に実施予定であった計画を進める予定である。
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