2021 Fiscal Year Research-status Report
Cashless Economy in Russia: Trends and Development Prospects
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21K17964
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
Gorshkov Victor 新潟県立大学, 国際経済学部, 准教授 (10742322)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | キャッシュレ化比率 / 新興国 / ロシア / デジタル化 / デジタル通貨 / 国内決済システム / 即時決済システム / 国家主導のキャッシュレスエコノミー |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、キャッシュレスエコノミーに関する理論・実証研究のサーベイを行い、ロシアにおけるキャッシュレスエコノミーの現状を把握するために、ロシア金融部門全体のデジタル化の動向を概観した。国家・市場・社会の3つの領域においてキャッシュレス化の動向を分析し、他の新興国・先進国との比較研究を行った。国際決済銀行(BIS)の統計を用いて、各国のキャッシュレス化比率の分析を行い、ロシアにおけるキャッシュレス決済は、2014年以降、著しく成長し他の新興国と比べ、Jカーブ型の成長を示していることが明らかとなった。多くの新興国市場においては与信の問題があるため、ロシアのキャッシュレス決済は主にデビットカードによって行われており、クレジットカードは依然として浸透していないこと、近年、電子マネーの取引が加速化していることが明確となった。キャッシュレ決済の著しい発展を内部要因と外部要因に分類したところ、とりわけ、外部要因がロシア経済のキャッシュレス化を促進させていることが明らかとなった。2014年以降、ロシアは安全保障への懸念から、国内決済システム(National Payment System)の構築とデジタル化に力を入れており、独自な決済カードシステム(MIR)や即時決済システム(Quick Payment System)、銀行間金融メッセージ交換システム、デジタルルーブルの開発など、積極的に進めてきた。このように、ロシアのキャッシュレスエコノミーは国家主導型の特徴が見られると結論づけた。上記の中間研究成果及びレビューに関する関連論文を公表し、国内外の学会及び研究会においても発表した。 さらに、今年度は国内外の研究者の助言を頂き、ロシアにおけるキャッシュレス決済に関するアンケート調査の質問項目を検討しアンケート案を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19の影響で、海外調査に行くことができなかったが、オンラインにできる活動を優先的に実施することで、当初予定していた計画を概ね実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は主に以下の活動を計画している。 まず、第一に、ロシアのキャッシュレスエコノミーにおける地理的な差異を比較するため、サンクトペテルブルグ市(大都市)とハバロフスク市(地方都市)、調査協力を依頼できる2つの研究機関を通して、アンケートを行う予定である。現在ウクライナを巡る状況からして、アンケートを確実に実施できるか否か非常に不確定な要素が多いため、調査期間によるアンケート実施を2023年度に延期せざることも考えられる。その場合、2022年度はフリーアクセスのIT技術の調査ツールを用いて予備的な調査を行うものとする。 第二に、国家領域に焦点を当て、キャッシュレス化を推奨しているロシア政府およびロシア中央銀行の政策(国内決済システムの導入およびデジタル・ルーブルの開発など)を概観し、キャッシュレス・エコノミーにおける国家の位置付けを検討する。ロシア経済に対する制裁を概観し、キャッシュレス決済へのその影響を合わせて検討する。 第三に、2021年度の中間研究成果をまとめ、海外ジャーナルへの投稿を進める。
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Causes of Carryover |
2021年度はCOVID-19の影響で海外研究者の研究機関へ現地訪問できなかったため、一部の助成金の残高が生じた。2022年度は現地調査(サンクトペテルブルグ市・ハバロフスク市)を予定しているが、コロナ禍で現地調査が難しくなった場合、アンケート実施は現地の調査会社Anikin Research社(モスクワ市)に委託する予定である。そのため、費用が当初の予定より高くなる見込みであり、2022年度の助成金は前倒し支払い請求をお願いした。また、ウクライナを巡るロシア状況からして、現地調査の機関との協力が難しくなった場合、本調査を2023年度に延期し、2022年度はオープンアクセスのIT技術のツールを用いて予備的なオンライン調査を行い、その成果を国内外学会で公表することにする。そのため、旅費の支出が多少増える可能性がある。
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