2023 Fiscal Year Annual Research Report
Cashless Economy in Russia: Trends and Development Prospects
Project/Area Number |
21K17964
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
Gorshkov Victor 新潟県立大学, 国際経済学部, 准教授 (10742322)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ロシア / キャッシュレス化 / キャッシュレス比率 / デジタル・エコノミー / 国家主導経済システム |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度はロシアのキャッシュレス決済の地域的な差異を把握するために、現地調査および文献調査を行なった。モスクワ市とサンクトペテルブルグ市を訪れ、スーパーマーケットや公共交通機関などでのキャッスレス決済の利用状況を確認した。ロシアの中央銀行のデータによれば、2023年12月末にロシアのキャッシュレス化比率は83.4%まで達し、国際的に見てかなり高い水準を維持している。キャッシュレス決済は最も浸透している地域はヤマロ・ネネツ自治管区(87%)、ハンティ・マンシ自治管区(82%)、サハ共和国(80%)である。このように、経済制裁による国外クレジット会社などのロシア市場撤退や欧米産のPOSターミナルや決済システムの導入の困難さがあったにも関わらず、国内決済において影響はないと見られる。 加えて、デジタル・ルーブルについて文献収集を行ない、今後のキャッシュレス決済に与えるその影響を検討した。デジタル・ルーブルによる取引は2023年8月1日にロシア中央銀行と一部の銀行の間で導入され、インターネットアクセスがなくても利用できる技術となっている。デジタル・ルーブルはロシア中央銀行により推奨されている技術であるが、現段階では、民間企業や一般利用者は、デジタルウォレットを開設する義務はないとしているため、キャッシュレス化比率に与える影響は限定的であると考えられる。 そして、最後に、本研究の3年間の研究成果の総括を行い、国内外コンファレンスおよび研究会にて国家主導経済システムの下で形成された国内決済システムのメカニズムとその特徴、他国のキャッシュレス化事情との比較などについて発表を行なった。本研究成果は、市場経済と国家主導経済におけるキャッシュレス化を推進する政策を考える上で、貴重な政策的含意となる。
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