コロナによる日本で中国系高度労働者の雇用状況および移住意識の変化

2022 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 21K17967
• Research Institution: Waseda University
• Principal Investigator: 張 潔 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究センター), その他(招聘研究員) (00804204)
• Project Period (FY): 2021-04-01 – 2024-03-31
• Keywords: 労働市場 / 外国人 / 雇用状況 / 移住意識 / 日本社会

Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は、コロナウイルス感染症のパンデミックが日本において中国系高度労働者に与えた影響を調査し、雇用状況および移住意識の変化を実証的に明らかにすることを目的とする。具体的には、以下の点に焦点を当てて研究を進めている。①雇用状況の変化：コロナ禍における経済の停滞や業界の変化が中国系高度労働者の雇用に与えた影響を明らかにする。例えば、失業率の上昇や労働条件の変化といった雇用の安定性や賃金に関する要素を分析する。②キャリア意識変化：コロナ禍による雇用状況の変化が中国系高度労働者のキャリア意識やキャリアパスに与えた影響を検討する。特に、スキルの需要・供給の変化や転職意欲の変動など、キャリア形成に関わる要素を考察する。③移住意識と留まり意向：コロナ禍により、中国系高度労働者の日本での移住意識や留まり意向に変化が生じた可能性を探求する。社会的状況の変化や安全・安心面への影響、将来のキャリア展望などに着目し、移住意識や留まり意向の要因を分析する。本研究では、日本企業で働いている外国人労働者（中国系ニューカマー高度労働者を含む）を対象とした量的調査データを分析し、コロナ以前に彼らの就業状況や移住意識（職種、年収、海外との関連業務、勤務状態、今後の日本での就労見込みなど）およびそれらの要因を検討している。次に、中国人の調査対 象を特定してインタビューを行い、コロナ影響による彼らの雇用状況および移住意識に関するデータを収集して質的に分析している。これにより、雇用状況変化と移住意識変化の関連を、国際労働市場や異文化適応の視点から総合的に分析することに進めている。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本研究は、日本企業で働いている中国系ニューカマーを対象として質的調査を行い、コロナ前後比較の視点からニューカマー高度労働者の雇用安定性および適応感を検討している。調査質問項目は、基本設問（各対象の個人経歴、就労状況など）、コロナ感染拡大による雇用状況の変化に関する設問、およびコロナ前後の日本へ移住意識の変化（今後の就労見込み、日本企業に対する要望など）の３つに大別される。インタビューによるデータ収集しているが、進捗が予定より遅れている。研究においては、中国系労働者との直接の接触や対面のインタビューが重要な要素である。しかし、コロナ禍の制約により、フィールドワークや対面調査を行うことが困難となった。移動制限、社会的距離の要請、施設の閉鎖などが研究の進行に影響を与えた。また、コロナ禍により、日本国内の経済が大きな変動を経験した。これにより、企業の業績悪化や採用凍結、リストラクチャリングなどの影響が中国系高度労働者の雇用状況に及んだ。そのため、研究におけるデータの入手や分析に時間がかかったり、予測困難な状況であるため結果の解釈が困難になったりした。さらに、コロナ禍による不確実性やストレスの増加は、中国系高度労働者の移住意識やキャリア意識にも影響を与えた。不安定な状況下での意識調査や心理的側面の分析は困難を伴い、十分な精度で結果を得るためには時間と配慮が必要であった。

Strategy for Future Research Activity

今後の研究の推進方策は、以下の要素に焦点を当てることで、研究の進行を促進し、結果の取得と解釈に向けた努力を行う。①オンライン調査の活用：コロナ禍の制約を考慮し、オンライン調査の活用を進める。オンラインインタビューなどの方法を使用して、中国系労働者とのリモートでのデータ収集を行う。これにより、制約のあるフィールドワークや対面調査を補完し、研究を進める。②複合的なデータソースの活用：単一のデータソースだけでなく、複数のデータソースを活用して研究を補完する。公的統計データ、企業データ、労働組合やNGOの報告書などのセカンダリデータを収集し、それらを分析することで研究の信頼性と幅広い視点を確保する。③長期的な視野での研究：コロナ禍の影響は長期化する可能性がある。そのため、短期的な変化だけでなく、長期的なトレンドや持続的な影響を把握するための研究を展開する。複数の時点でのデータ収集や継続的なフォローアップ調査を通じて、時間の経過に伴う変化やパターンを明らかにする。

Causes of Carryover

コロナ禍の影響により、今年度の研究は予想以上に遅れました。そのため、研究の完遂と結果の取得には追加の時間とリソースが必要である。次年度の使用を申請することで、研究を継続し、目標を達成する機会を得ることができる。また、コロナ禍による制約のため、今年度のデータ収集は予定よりも制約が多く、一部のデータの収集が遅れました。次年度の使用を申請することで、未収集のデータを補完し、より包括的な分析と結果の得られる可能性を高める。さらに、コロナ禍の長期化に伴い、中国系労働者の雇用状況と移住意識は変化し続けています。次年度の使用を申請することで、時間の経過に伴う変化とトレンドを観察し、雇用格差や移住意識の変化のパターンや要因を明らかにする。