2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on the Empowerment of Indigenous Communities through Sustainable Tourism
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21K17968
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岡田 真弓 北海道大学, 観光学高等研究センター, 准教授 (80635003)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 先住民族観光 / アイヌ民族 / 北海道 / エンパワーメント |
Outline of Annual Research Achievements |
北海道各地でアイヌ文化を活かした観光振興が検討されている現在、アイヌ文化の伝承活動と経済活動の連携、アイヌに対する理解促進の強力なツールとしての観光のあり方や観光現場で表出している課題解決のための研究が求められている。本研究は先住民族観光Indigenous Tourismの理念形成の変遷、先住民族観光の先進国の取組、そして北海道におけるアイヌ民族観光(アイヌ民族・文化が関わる観光)の特徴を明らかにした上で、(1)先住民族観光の議論に日本のアイヌ民族観光を位置づけること、および(2)自律的なアイヌ民族観光に求められる理念や仕組づくりを具体的に提示することを目的とする。 今年度は次の調査研究を行った。 ①国際・地域機関による先住民族観光に関する理念形成の変遷と現在の動向を理解するための文献・資料調査:世界先住民族観光連合(WINTA)、国連世界観光機構(UNWTO)、太平洋アジア観光協会(PATA)といった国際機関や地域機関がこれまでに出した宣言、報告書、勧告、倫理綱領、その他の関係文書を収集・分析した。 ②北海道観光とアイヌ民族との歴史的関係性を把握するための文献・資料調査:北海道観光に従事したアイヌ民族に関する先行研究レビューや資料収集を行った。 ③北海道内のアイヌ民族観光の実情と課題を理解するための阿寒湖アイヌコタンにおけるフィールドワーク調査:従前よりアイヌ民族観光と文化伝承の両立に取り組んでいる阿寒湖アイヌコタンにおいて、アイヌ文化の知的財産権保護事業を展開する阿寒アイヌコンサルン、阿寒観光協会、ホテル事業者にヒアリングを行った。 これらの研究成果は、国際シンポジウム等の場で口頭発表するとともに、2022年度に刊行される英語論集の一部として刊行予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Covid-19の感染拡大の影響で、参加予定であった先住民族観光サミット(開催地オーストラリア)は延期となったが、文献・資料調査および関連するオンライン国際シンポジウム等への参加を通じて国際・地域機関における先住民族観光に関する動向把握につとめた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、先住民族観光の先進国における具体的な取組とその実効性を明らかにすること、および北海道内におけるアイヌ文化観光の特徴と課題の把握に焦点をしぼり研究を進めていく。 オーストラリア、ニュージーランド、カナダといった先進国に関する調査研究では、文献・資料の分析から先住民にとってエンパワーメントとなる観光にむけた各取組の概要を把握し、関係者への聞き取り調査を通して取組の背景や運用実態を明らかにする。北海道内における調査研究では、アイヌ民族観光の中心地である白老、平取、阿寒のほか、これらの地域と広域連携を結び、地域のアイヌ文化に根差した観光振興に取り組む函館、札幌、旭川を対象として、関係者への聞き取り調査を通じて各団体の戦略や現在の課題を明らかにする。
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Causes of Carryover |
参加予定であった先住民族観光サミット(開催地:オーストラリア)が延期となったため、旅費等に残高が生じた。次年度使用額は、今後の現地調査旅費および文献資料収集等に必要な経費に充当する予定である。
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