2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K17992
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
藤高 和輝 京都産業大学, 文化学部, 助教 (50876662)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | トランスジェンダー / トランスフォビア / 現象学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、トランスジェンダーへの差別の背景に社会的構造や規範を現象学の手法を用いて分析するものである。トランスフォビアに関する批判的研究はすでにフェミニズム、クィア理論、トランスジェンダー・スタディーズに蓄積があり、したがって、(1)その基礎(2)研究や国内の研究状況への導入、紹介、そして(3)国内の文脈を踏まえた応用的研究が必要である。具体的には、ゲイル・サラモンの重要著作『ラティーシャ・キングの生と死――トランスフォビアの批判的現象学』を軸に、関連する先行研究をも踏まえて上記の研究を遂行するものである。 2021年度においては、「ゲイル・サラモン『ラティーシャ・キングの生と死』――トランスフォビアを批判的に読み解くために」(『現代思想』vol. 50, no. 1, pp. 140-145)において、本研究でもっとも着目している重要著作の紹介を行った。また、「ポストフェミニズムとしてのトランス?――千田有紀「「女」の境界線を引きなおす」を読み解く」(『ジェンダー研究 お茶の水女子大学ジェンダー研究所年報』vol. 24, pp. 171-187)においては、トランスフォビアの批判的研究を日本の文脈を踏まえた研究を遂行した。まだ十分な形ではないものの、2021年度は(1)から(3)の研究をバランス良く進めることができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「ゲイル・サラモン『ラティーシャ・キングの生と死』――トランスフォビアを批判的に読み解くために」(『現代思想』vol. 50, no. 1, pp. 140-145)において「トランスフォビアの批判的現象学」を国内の研究状況に導入する仕事を行うなどの形で、この研究の基本的なコンセプトに関わる基礎研究や導入・紹介の作業を遂行した。また、「ポストフェミニズムとしてのトランス?――千田有紀「「女」の境界線を引きなおす」を読み解く」(『ジェンダー研究 お茶の水女子大学ジェンダー研究所年報』vol. 24, pp. 171-187)において日本国内の文脈を踏まえた応用的研究もある程度遂行することができた。初年度に当たる2021年度に、本研究の見取り図を提示する研究に関しては十分に遂行することができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画書にも記したように、本研究ではゲイル・サラモンの『ラティーシャ・キングの生と死――トランスフォビアの批判的現象学』の翻訳も行う。この翻訳作業を十分に進めることができなかったのが2021年度の反省点である。また、サラモンのトランスフォビアの批判的現象学にも影響を与え、理論的なバックボーンになっている「フェミニスト現象学」「クィア現象学」「批判的現象学」といった現象学的研究の理論研究を十分に行うことができなかった。現在まで、本研究は概ね計画書通りに順調に進行しているが、今後は以上の点をとくに念頭に置いて推進する必要がある。
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Causes of Carryover |
新型コロナ・ウィルスの感染拡大の影響を受け、当初想定していた各種学会や研究会などへの参加(それにかかる旅費)や公開研究会の実施の見送りによって、当初の使用計画の変更を余儀なくされた。 また昨年度の分、そして今年度も同様の事態が予想されるので、申請者の研究テーマと広く関連する文献の購入に補充する予定である。
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