2021 Fiscal Year Research-status Report
能動型X線分光計AXS用の焦電型X線発生器PXGの開発研究
Project/Area Number |
21K17999
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
内藤 雅之 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 計測・線量評価部, 研究員 (30778147)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 焦電結晶 / X線発生器 / 焦電型X線発生器 / 能動型X線分光計 |
Outline of Annual Research Achievements |
焦電効果は温度変化に依存して物質表面に自発分極を生成する現象である。焦電結晶を1 Pa程度の真空中で温度変化させると分極によって電子が加速されX線を生じることが知られている。一方で、加速電子の発生する物理過程は未だ明らかになっておらず、発生X線の強度は従来のX線管と比べると安定性が低い。本研究の目的は電子発生過程の解明と発生X線の高強度・安定化である。最近になって、酸化チタン化合物半導体と金属のショットキー接合部で焦電結晶の10倍以上の焦電効率を示すことが明らかになった。本研究ではNb添加BaSrTiO3とAuの接合(Au/Nb:SBTO)間に生じる焦電効果をX線発生に応用し、電子発生過程の解明を目指した。 Au/Nb:SBTOを約1 Paの真空に封入して温度変化させ、近傍に設置したSi検出器でX線発生量を測定した。結果として、Au/Nb:SBTOによる焦電効果ではX線の発生は確認できなかった。この原因として、焦電結晶とショットキー接合に表れる焦電効果の原理上の違いやそれによる生成分極の上限が考えられる。焦電結晶の自発分極は結晶構造の電気的分極が温度に依存して変化することによって現れる。一方、ショットキー接合の焦電効果は接合部の電子が温度変化に応じて再配列することによるものである。 Au/Nb:SBTOを用いた実験と並行して従来の焦電結晶LiTaO3を用いた実験も行った。X線発生が不安定になる原因として、生成分極が結晶沿面で大規模な放電を起こすことが報告されている。ターゲット部に針構造を追加し絶縁距離を短くすることで、放電現象を抑制することができた。一方で、針構造の追加したことで発生するX線強度としてはむしろ減少する傾向を示した。今後はより安定で高強度なX線を得ることを目指した基礎研究と試作機の作成を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Au/Nb:SBTOを用いた基礎実験とPXG試作機の作成までを行う予定だった。基礎実験は概ね予定通りに進捗したが、試作機の作成まで行うことができなかった。試作機作成に遅れが出たのは主に納期の問題で、年度内の予算に含めることができなかったため翌年度に繰り越した。
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Strategy for Future Research Activity |
Au/Nb:SBTOによるX線発生が見られなかったため、従来のLiTaO3を用いた研究を中心に切り替える。X線強度に影響を与えると考えられる要素として、結晶の品質や金属ターゲット側の構造などが考えられるため、それぞれを複数用意して基礎実験を行う。 プロトタイプとなる試作機の作成を平行しておこない、完成した試作機の性能評価も行う予定である。
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Causes of Carryover |
X線発生装置の試作品の作成を予定していたが、年度内に納期が間に合わなかったため翌年度分として請求した。
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